

1998年5月のWRC(世界ラリー選手権)第7戦、ラリー・アルゼンチン。スバルインプレッサWRカーを駆るコリン・マクレーとニッキー・グリストのコンビはステージ15で右リアサスをデカい岩にヒットし、ロアアームを曲げてタイムロス。しかし彼らは自ら修理を試み、アームを外して道路脇の岩を叩きつけて曲げ直しレースに復帰。挙句、次のステージでは右後輪をガタつかせながら、トップタイムを叩き出してしまった……。「事実は小説よりも奇なり」とは、このことを言うのでしょう。
数あるWRCの名シーンの中でも、伝説的なこのエピソード。この’98年シーズンから、当時中学生だった僕はWRCにのめり込みました。今回紹介するタミヤ1/24スバルインプレッサWRC’98は、激アツな時代とプラモメーカーとが交差した名作です。
ワールドラリーカー(WRカー)は、グループAの一種として1997年に加わった新カテゴリー。特に欧州メーカーが参戦しやすいよう、ベース車両に関わる認可規定が緩和され、改造の自由度が高いのが特徴です。スバルワークスは初年度からこのWRカーを導入。その二年目の’98年シーズン途中の7月、タミヤは開幕戦モンテカルロ仕様をキット化しました。

上の写真は、最近になって当時集めた雑誌や本を使い倒し、ガチめに作ったものです。WRカーの規定いっぱいに広げられたブリスターフェンダーに加え、ハの字にキャンバー角が付いたターマック(舗装路)仕様のタイヤが最高じゃないすか!

先の「伝説」を生んだリア脚周りも見てみましょう。シャフト類やデフ、アームが余すことなく再現されています。当時、マクレーが自力で素早く修理できたため、FIA(世界自動車連盟)派遣委員による事情聴取が入ったとか。マクレーがマシン下にもぐっている映像は、最高の実車資料でもあります(ありがとう!?)。

これは組んでみて初めて実感したのですが、コックピットがとにかく狭い! そこへ装備品がびっしりと詰め込まれていて、1/24スケールだと部品同士のスキマがわずかです。そしてここにこそ、精密さと組みやすさを両立したタミヤらしい設計がフルに発揮されてて、気持ちがいい。
そういえば、中学の学祭でランエボを作って展示したのだけど、放課後の教室でオンボード映像を友だちと見た記憶が蘇りました(当時の媒体はVHSだったね)。

’98年シーズンは、タイトル争いが最終戦までもつれ込む大混戦と劇的な結末でした(ぜひ調べてみてね)。翌’99年は相次ぐメーカー参入、新世代の台頭、マシン開発の激化と、役者が揃いまくってWRカー黄金期に入っていきます。それに呼応してタミヤも毎年、新金型とバリエーション展開を怒涛のごとくリリースします。

その原点こそが、このインプレッサ。タミヤによる初めてのインプレッサ、かつWRカーのキットにして、マクレーによるスバル最後のマシン。TS-50マイカブルーの塗料だって、このキットのために開発されたんです。カタログ品としていつでも買えますが、じつは歴史の重みを伴ったプラモなんです。そう、以上は、僕がWRCにドハマりした思い出というより、もはや、「未来のモデラーと分かち合いたいラリーカープラモの歴史」だと思うのです。