『トップ・ガン』の新作がやってくる!ということで飛行機模型専門誌、スケールアヴィエーションがじつに7年ぶりのF-14トムキャット特集です。艦載機で主翼が開閉して強力無比なフェニックスミサイルを搭載するという超わかりやすいキャラクターで映画やゲームで活躍し続けてきたF-14トムキャットですが、その姿は複雑怪奇。図面引いて木型を起こしてそれをもとに金型を手作業で作って……という時代にこの飛行機をかっこよく組みやすくプラモにするのはすごく難しいことだったのです。
たとえば1/72スケールや1/48スケールでは「完成させることがベテランの証」というイメージで親しまれたハセガワの定番キットがあったり、タミヤの巨大な1/32モデルが世界中で愛されてきたわけですが、正直ビシッと作るのは難しい……というのがホントのところでした。
しかし2016年にタミヤが1/48のトムキャットをリリースすると世界の景色は一変します。「こんなに簡単に、キレイにトムキャットが作れてたまるか!」と叫びたくなるほどの精度と圧倒的おもてなしパワーを以てプラモデルになった「新・トムキャット」はまさにあらゆるスキルレベルのモデラーがひとしくカッコいいF-14を手にすることができる最高にして最強のプラモとして君臨しているのです。ほんとすごいから一回は組んだほうがいいよ。
タミヤのトムキャットが「永遠の決定版」となって物語は終わり!と思われたのですが、さにあらず。翌年からさまざまなメーカーが我も我もとトムキャットのプラモ化に乗り出します。ハセガワやファインモールドといった国内メーカーのバリエーションキットに続き、グレートウォールホビーやアヴァンギャルド、アカデミーといった東アジアのメーカーたちがこぞって「こっちのほうが精密で組みやすいぞ!」とそれぞれ個性的な特徴を引っさげてトムキャットを精力的に立体化したのです。
スケールアヴィエーションが今回提示しているトムキャット特集は「温故知新」というよりもまさにここ7年のトムキャットをとりまく環境をおさらいし、それぞれのキットの特徴と「いまトムキャットをつくる理由」を積極的に捉えようという、まさに定点観測として価値ある内容になっています。インターネットで残されるアーカイブが時系列を問わず積み重なっていくのとは対象的に、一冊にまとまって通覧できる雑誌という媒体だからこそ編むことのできたトムキャットの最新事情。これを読めば、いますぐにトムキャットを作りたくなること間違いなし&模型店でどれを手に取ろうかの手引きもバッチリ、という寸法です。
私からぱたも随所で原稿を執筆していますが、今回ぜひとも読んでもらいたいのはポーランドの新進気鋭メーカー、アルマホビー社に対するメールインタビューです。激動の東欧におけるプラモデル趣味のありかた、そこから立ち上がった情熱と野心にあふれるモデラーによって、世界に肩を並べるプラモメーカーになりたいと奮戦する様子は書いているこっちも奮い立つ内容です。
さらに1/72スケールのハセガワ製二式大艇を大胆かつ緻密にカットモデルにしたみにすけ屋氏による作例は必見of必見。巨大な飛行機の中で奮戦する兵士たちの息遣いがいまにも聞こえてきそうな圧倒的な演出力、みなさんのプラモ作りに必ずや影響を与えてくれるはずです。