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60年代の世相を冷凍保存したプラモデル/アトランティス「米国のミサイル盛り合わせ」

 箱開けたら筒がたくさん。ミサイルというのは基本的に筒にちょっとしたハネが生えているようなものです。盛り上がりませんね。全部白だし。みなさんはもっと複雑でわかりやすくカッコいいもののプラモデルが好きだと思いますが、このアイテムの源流をたどると1958年(終戦からたったの13年)です。

 いまいましい戦争の記憶は「プラモデルで楽しもう!」という今の空気感とはちょっと違ったはずで、むしろこれから始まる輝かしい未来とか、緊張感ある冷戦の中で自国がいかにイケているかという現在の話の方がよっぽどパワフルだったのではないかと推察されます。

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 モノグラムという会社から「ミサイル アーセナル」というタイトルで発売されたプラモデル(アーセナル=武器庫の意)が1969年に仕様変更され、アメリカ合衆国が誇る36種類のミサイルを詰め合わせにしたこのプラモデル。実際、発売された当時でも「なんかなぁ、筒だしなぁ……」という空気感で、いくらプラモデル×ミサイルという組み合わせが先進的でモダンだった時代といえど、爆発的なヒットにはならなかったようです。カーモデルのほうが面白いもん絶対。

 で、付属のデカールを貼るとそれなりに盛り上がるのかな……とか思いますが、ボックスアートの写真を見るとかなりの分量で「自力で塗らないと盛り上がらないなこれは」と思い直すハメになります。刺し身(塗装なしの組んだだけ)だともう全部白で見分けつかなそう。キミはミサイルを組みたいか?塗りたいか?本当に?

 さて、現在ではアトランティスという会社から再販されているこの盛り合わせですが、ミサイルを展示する青い台座にはちょっとワクワクさせられます。ミサイルの種別と愛称、そしてミサイルを立てるための穴が彫刻してあって、これはかつて一世を風靡したペプシのボトルキャップの台座を彷彿とさせます。あったでしょ、スター・ウォーズのキャラクターをずらりと並べられる台座(タトゥイーン色)がもらえるキャンペーン。

 なんといいますか、「ミサイルだけザラザラ入っていたら、さすがに作って飾るのも難儀だろう。銘の入った台座があれば人間はコンプリート欲を刺激されて全部組むのでは?」という当時のスタッフのアイディアが炸裂しておるわけですね。

 ちなみにミサイルのディテールとかはものすごく簡易的で、ディテールがこまかいとかそういうことも全然ない。ただ「公開された写真をもとにそのように見える模型を作りました」という感じのプラモデルです。さらに言ってしまえば、本当に配備されたとか発射されたミサイルばかりではなく「こんなのも開発中ですよ」とか「開発したけどテストしかしてませんよ」みたいなものまで網羅しているので、ひとつひとつの資料的な価値というのもあまりない。

 つまるところ「アメリカ合衆国の1969年当時の技術や展望のスナップショット」なんですよねこれ。もっと単刀直入に言ってしまえば、ノスタルジア100%。ミサイルの模型ではなく、世相の模型。そうか、プラモデルはこうやってコケた企画も「そういう時代だったんですよ」というのが残せるのか、という気付きがあります。

 なんだか巨大で詳しい解説シートも入っていて、STEM(科学技術教育)教材らしさというのもちゃんと復刻されています。来なかった未来も含めてイケイケだった戦後アメリカの軍事大国っぷりを冷凍保存したプラモデル、いまも当時の出で立ちのまま買えるんです。逆に言えば、ミサイルに限らずいろいろな昔のプラモデルが今も買えるというのは「ただ古びていくものが今も売られている」というだけでなく、「当時の技術とか認識が金型に保存されている」ということでもあるのです。プラモデルって、不思議な遊びですねホント。

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からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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