「ナチュラル」という無地の革でルイヴィトンを作ったデザイナーのNIGOが、雑誌『relax』で言っていた。もう20年以上前の話だ。すみっこにブランドロゴが入った派手な引き算がなされたコレクションを自慢する姿は、彼が尖った存在だったことの証明だ。なにより、掲載されている写真を見て「このカバンはルイヴィトンだな」と思えるのがすごい。アイコンのようなモノグラムを捨て去ってしまっても、まだルイヴィトンらしさが残っているというわけだ。
似たような体験ができるかもしれないと思って入手したのが、タミヤの1/12のカタナである。個性的なデザインがかっこよく、バイクのことを知らなくても「カタナ」という名前と相まって一度見たら忘れられない存在だ。僕もどこかでカタナを見たのか、存在だけは知っていた。じつは、プラモデルを始めたころに作ってみたいなと思っていたのが、カタナのプラモデルなのだ。
作ってて「なんかすごいバイクだ」と気づいたのは、フットペダルを付けるところ。左右同じ場所につけるのではなく、違う位置につける。パーツも左右対称のものを付けるわけではない。それでも上から見たときに左右同じ位置に足が置けるようになっている。その割に、前後のウィンカーは同じ番号が割り当てられたパーツを使用していて、統一感がある。
ウィンカーやフットペダルという些細な部分にもデザインの工夫が込められていて、理由はわからないけど、これがカタナのかっこよさを構成する要素なんだなという事実だけが、組み立てた感触として残る。それは神秘的だとすら思った。
無塗装で完成させたカタナはカウル、タンク、シートのラインがシルバーのプラスチックでまとめられていて、実際のマシンよりも流れるような一体感がわかりやすい見た目になった。ところどころでエッジが立っていることもわかるので「カタナのような鋭さを持ったデザイン」であることがとても理解しやすい。
モノグラムを排してもルイヴィトンのバッグだと認識できるように、特に塗装などをせず、バイクのフォルムだけを味わってみることで、よりカタナのカタナらしさを感じることができて、とても楽しい時間を過ごせたのだった。