

amtブランドから’63シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴンのキットが出て、僕は泣いた。なんて素晴らしいプレゼント、なんて素晴らしい挑戦なのかと。
1950年代後半から60年代にかけて、アメリカは空前のカープラモ・ブームに沸いていた。ウールワースやウォルマートといったスーパーマーケットには当時最新のアメリカンカーのプラモデルが山と積み上げられ、少年たちは競うようにそれを求め、無我夢中で組み立てた。その多くは色も塗らず一気呵成に完成させられたが、腕の覚えの一部ハイティーンはエンジンまで含めプラモを改造して独自のカスタムカーを作り上げ、クラスメートたちをあっと言わせた。彼らはスターだった。


そんなスターに憧れるローティーンたちに向けて、当時のamt社は手間もかかって難しいエンジンパーツを大胆に省き、より簡単に組み上がる新シリーズを提案した。その名も「クラフツマン」。部品数はぐっと少なかったが、レギュラー・シリーズ同様に自動車メーカーの持つ資料と図面に基づいて設計されたクラフツマンのキットは本物と見紛う端正なプロポーションを持ちつつ、塗装を前提としていたため白い部品ばかりだったレギュラー・シリーズと違って、とてもカラフルに成型されていた。さらには、年少者にだけこっそり配られるキャンディーのように、リスや犬、あるいはamt社の広告マンガで当時おなじみだった「The KAT」などのマスコットが封入されていた。

クラフツマン・シリーズは大ヒットし、60年代のカープラモ・ブームをより盤石なものとした。当時の熱狂が消費したカープラモの数は、多いものだと1タイトル500万個ともいわれ、ことに年少者向けのクラフツマンは消費量も多く、amt社の「金型はできるだけ使いまわして後に遺さない」という方針も相まって、やがて火の鎮まった後世にほとんどその未組立の姿を遺すことなく消えていった。
今回amtブランドが新製品として世に問うた’63シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴンは「クラフツマン・プラス」とシリーズが銘打たれ、まったく新規に金型が起こされた。いうなれば「プラモデルのプラモデル」だ。


そのフォーマットは60年代当時のクラフツマン・スタイルがきちんと踏襲され、シャシ側から見えるエンジンの姿は浮彫りのプレートを嵌め込む仕様になっている。しかし、そのプレートを使わずに、どこかからより精密なエンジンパーツを丸ごと持ってきてもそのまま仕込むことができるくらい、エンジンルームの内壁などは細かく彫刻されているのが現代的だ。また、かつてはメッキのフェイスと一体成型だったライトレンズが、透明パーツとして別体化され、組み上がりの見映えはぐっと向上していたりする。昔はなかったメーターパネルのデカールまで添えられている。もちろん、プロポーションは最高だ。

そして、キットの中にひっそりとリスが潜んでいる。半世紀以上前には黄色かったり青かったりカラフルだったあのリスが、今やすっかり大人になってしまったかつてのキッズに逢いに、真っ白に成型されて入っている。やあお前か、お前もすっかり白髪になって、とかつての友なら声をかけるだろう。映画『アメリ』に登場した、少年時代の宝箱に再び出会って涙するドミニク・プルトドー氏のような気持ちで。

21世紀を生きるすべての人に、懐かしさと新しさ、万感を込めておすすめします。