「遊び」の多様化を体現したカスタマイズカルチャーのプラモデル/amt 1977 Ford Econoline Surfer Van レビュー!

 amtやMPCの歴史には、アメリカンフルサイズバンの膨大なカタログがある。

 これはひとえに石油危機をはさんだマッスルカーの隆盛と衰退の結果だ、ともいえるが、見方を変えればこれはプラモデルメーカーの「新機軸」の成果だったともいえる。

 自動車メーカーと連携し、毎年発表されるニューモデルにあわせてニュープラモデルを発表し続ける時代は、プラモデルメーカーにとっては負担の大きな時代でもあった。フロントグリルを飾る横棒の位置ひとつ違うだけで、莫大な費用を投じて金型を改修せねばならない。スケジュールはいつもぎりぎり。実車のスタイリング・チェンジはいつも気まぐれで予測がつかない。

ホビコレ AMT 1/25 サーファーバン 1977 フォード・エコノライン

 これがバンの時代になって変わった。コマーシャル・ユースを前提としたバンには頻繁なモデルチェンジがない。エンジンレイアウトによるキャブオーバー型から(鼻は短いながら)ボンネット型への回帰や、法制度によるヘッドランプの形状変更などの大きな変化は、あってもきわめてまれなことだ。基本構造はあくまでシンプル&プレーン。カスタマイジングのあり方もまた、マッスルカー時代のように大掛かりなことをせずとも、ウィークエンドにちょっと手を加えるだけで満足できるスタイルへと潮目は変わった。

 これはプラモデルメーカーにとっても、コストのかさむ金型改修の頻度を抑え、わずかな追加パーツや大判デカール、箱絵や商品タイトルの変更によってみるみるカタログを充実させ、少年たちをコレクションの夢へと駆り立てることのできる環境の創出につながった。

 アメリカンカープラモは常に実車さながらであることに特別なこだわりを持ち続けてきたが、一見バリエーションの安易な水増しと思われがちなバンプラモの膨大なカタログは、実のところ実車をとりまく「遊び方」の忠実な再現であったわけだ。

 その気になればなんの変哲もない75年以降のフォード製カーゴバン(エコノライン)にも組み上げられる堅実なキットに、8本のタイヤ、8個のホイール、カスタムパーツ、サーフ/ティキ/ウッディの要素をこれでもかと盛り込んだゴージャスなデカールの詰め合わせは、amtやMPCの歴史のなかでこれまで実現したことのない仕様だ。

 これらの意匠が全盛だった時代と距離ができてはじめて可能になる凝った再現を「考証」と呼ぶなら、このキットに施された考証はきわめて素晴らしいものだ。歴史とつながってみたいが何もわからない若者が、何もわからないままで1970年代終わりのビーチの黄昏を手に入れることは、今じゃプラモデルにしかできないことだ。

 サーフボードがふたつ、長いやつと短いやつが付いているだろう? それぞれ男女用? 違う違う。70年代はサーフボードが急激に短くなったピリオドなんだ。長い方はより伝統的だけど、シングルフィンの形状からして60年代後半より前のものじゃない──。

 問われればスラスラと答えられるだけの奥行きが、このキットにはそなわっている。

ホビコレ AMT 1/25 サーファーバン 1977 フォード・エコノライン

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bantowblog

1972年生まれ。元トライスタージャパン/オリオンモデルズ、旧ビーバーコーポレーション勤務を経て、今はアメリカンカープラモの深淵にどっぷり。毎週土曜22時から「バントウスペース」をホスト中。