「2021年は艦船模型のウォーターラインシリーズが50周年なんだぜ」と聞き、艦船模型をまた作りたくなったフミテシ。以前艦船模型を楽しんでいた時から、いろんな工具や製作テクに出会ったこともあり、プラモの箱を開けてみるとさまざまなアイディアが浮かんできました。特に一番自分の中で変わったのが「艦船模型は甲板や艦底はマスキングして塗り分けるもんだ」という固定観念です。しかしシタデルカラーなどの高性能な水性塗料との出会いにより、エアブラシ塗装(缶スプレー塗装でもOK!!)と筆塗りを併用してマスキング無しで塗ることができるじゃないかという思いがパーツを見ているとむくむくと湧き上がってきました。むしろその結果を自分で確かめたいと思ったことで、この連載記事をスタートしました。その結果は僕の中で大満足。しかも重巡洋艦というまもなく戦艦に近いボリュームの艦船模型もこの塗り方でカッコよく仕上げることができました。僕の中で艦船模型のちょっと怖かった部分を回避して完成させることができる航路をまとめました。ぜひ読んで、艦船模型を楽しんでみてね。
艦船模型は昨今、国内・海外メーカーともに「高解像度」「パーツの細分化」とプラパーツで恐ろしいほどの再現度を狙ってきています。凄いキットなのですがちょっとだけしんどい。「箱パンパンのアンパンマン!」って箱を開けた時に独り言を言っていた私のように、「これ作れるのかな〜」「完成までの道が見えない」と頭を抱えていた方も多いと思います。
しかし現在の高解像度時代のキットより、少しだけバックすると俺のような「パーツ少なくて、ある程度いい感じにシャープで、パーツもぴったり合う」というワガママキッズの声を叶えてくれるキットがいるんです。2000年〜2007年くらいまでに発売された艦船模型です。考証などは現在のキットとは異なるかもしれませんが、パーツ数も多過ぎず、成型も綺麗だし、1/700スケールで十分にかっこいいディテールが味わえます(記事の最後にリンクを貼っておきますね)。なんでこの時期で区切っているかというと、2008年にフジミ模型から「金剛」という怪物キットが爆誕するからです。俺とnippperのライター・けんたろうくんとの間で、「フジミ金剛の前と後ろ」と言った感じでよく話しています。この話はまたnippperでお届けしようと思うので、その機会に。ハセガワの青葉も2007年に発売されたキットで、パーツ精度も問題なし。もう一度海に出るには最高の重巡キットでしょう。説明書を開いて、いざ出港です。
船体は主に3パーツ(本体、甲板、艦底)という構成のものが多いです。この3つの要素を接着することで船体が完成します。これまで俺は、全て接着して艦底部の合わせ目も消して、その後マスキングして塗り分けていました。このパーツ構成とパーツの精度をチェックし、ぴったり合っていれば接着する前に塗ることでだいぶお気楽に塗装ができるのでは考えました。
日本海軍の艦艇はほとんどが軍艦色と言われるグレーです。プラモの成型色もほとんどがグレーです。ですのでグレーにグレーを塗るとなんか盛り上がらないし、ちゃんと色塗れてるのか? と不安になります。航海の最大の敵は「不安」。オキサイドレッドを下地にすれば、めちゃくちゃメリハリ出ますし、グレーが発色しているのも一撃でわかります。
これまで甲板はマスキングして塗り分けていたのですが、筆塗り塗装に最高の「シタデルカラー」と出会ったことで、自分はマスキングから解放されました。今まで何時間もかけて塗装していたのが、青葉のようなボリュームの船なら30分で塗り上げられます。ポイントは2点。グレーはエアブラシ、リノリウムは筆で攻めるということです。人によっては「面積の多いリノリウムをエアブラシで塗るのでは?」と思うかもしれません。僕にとっては突起物のグレーは形状が丸かったり小さい四角のようなものが多いので返って塗りにくく、リノリウムは平面なので塗りやすいからです。
セールカラーを水性塗料筆塗りで行うときに、快適でかつナイスな色味の塗料をご紹介します。「シタデルカラー レイスボーン」です。シタデルカラーの主戦場であるウォーハンマーには、息を吸うように「髑髏」のモチーフが出てくるのですが、その髑髏の色としてラインナップされているのがこの「レイスボーン」なのです。
なんで緑系の塗料なの? って言うのは、これは俺が大好きな艦船モデラー・Takumi明春さんと一緒に艦船模型を作った時に、彼が最後の締めにめちゃくちゃに薄めたオリーブドラブをエアブラシで上掛けしていたんです。黒や茶より主張せずに影っぽくなるし、グレーの色味にも緑のフィルターが加わってさらにセクシーになっていきました。俺はその方法をウェザリングカラーに置き換えて取り入れています。ウェザリングカラーにも緑はあるのですが、シェードブルーから作った緑の方が俺的にはぐっときたので、このレシピでやっています。
塗装に使用するのが、タミヤのエアーモデルスプレー。各国の航空機にあったナイスな色が用意されています。さらにこのスプレーは、通常のタミヤスプレーの弱点、「エナメル塗料を塗ると溶け出す」ということが克服されています。これで全体を塗装したら、細部をシタデルカラーで塗ります。日の丸や機番はデカールを使用しますが、ラインはデカールを貼るより筆塗りした方が圧倒的に楽です。小さいから多少よれても目立ちません。
ウォーターライン50周年ということで、再び作ってみたくなった艦船模型。艦船模型にどハマりしていた頃よりも明らかに肩の力が抜けて、とても楽しい時間を過ごせました。それも自分自身がnippperを通して便利なマテリアルや塗装方法、筆塗りの楽しさなどを身をもって知りそれを実行できたから。特に甲板のノンマスキング塗りは僕の中でもとても気に入っていて、また艦船模型の世界に入りたいなと思えるようになりました。あの頃夢中だったものに今の模型を楽しむスタンスで再会できたことは、僕の中で本当に良い経験になりました。いつも艦船模型は僕の模型ライフの中に何か刺激を与えてくれる存在です。ウォーターラインシリーズ50周年おめでとうございます。
1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)