あの時代も模型は「未来」を見て楽しんでいた! 模型のメディア論 著者/松井広志インタビュー 

 「模型のメディア論」の著者で、現在は現在、愛知淑徳大学で教鞭を取る松井白広志へのインタビュー連載。前回の「nippperはプラットフォーム志向」に続いて、メディア考古学的視点から現在の模型とこれからの模型の楽しみ方について松井さんに語っていただいた。(インタビューアー/まいど!)

▲インタビューに答えてくれた松井広志による「模型のメディア論」の書評
▲インタビュー1回目。松井氏から見たnippperとは?

 まいど! 「模型のメディア論」でも触れられている「メディア考古学」の視点から、現在の模型をどう見ておられますか?

 松井 戦前では多数派だった「未来を志向した模型」、言い換えれば「創作模型」が少ないように感じます。「模型のメディア論」では戦前の模型を「未来の機能を実現したメディア」として総括しています。現在の模型は、この未来の創作や空想の部分が弱くなっているかなと思います。

 まいど! 「実物の形状を似せたもの」という特徴は模型の定義として自明ではないのですね。

 松井 「模型のメディア論」の中でも江戸時代から始めて、戦前、戦中、戦後で媒介するものが異なっていると分析しました。誤解しないでいただきたいのは、戦前から戦後に向かって「進歩」したという意味ではない事です。過去の資料を参照して、自分が作ってきた戦後的な模型、つまり「過去の形状を再現する模型」だけが模型ではないんだ、というのは発見でした。

▲まいど!作 モデルズビット 1/48 XP-55 アセンダー。実物を似せたものという点で過去の形状を再現しているメディアだ

 まいど! 艦船模型の世界では現代でも「架空艦」という楽しみ方があるのですが、戦前からかなり近いものが既にあったというのが驚きでした

▲戦前のコンテストで上位入賞作品の「自由型軍艦」(出典/科学と模型1937年7月号 朝日屋理科模型店出版部科学と模型社、14-15ページ)

 松井 実物がないものをモチーフにした模型は戦前の資料を参照すると数多く見つける事ができます。戦前の資料を見たら「模型」という言葉は 実物が無いものの模型の意味で使われている事が多いです。戦後的なスケールモデルにしても戦前の創作模型でも、広い意味での「実物」、モチ ーフがあって再現していることに主眼があることに変わりはありません。現在でも建築模型などではまだ狭い意味での「実物」が無いものを作る というのは自明の事でもありますね。

▲インタビュー当日お持ちした祥鳳を見つめる松井氏

 まいど! 語弊のある言い方になるのですが、架空艦は実物があるものに対し、格下に見られる傾向も現在ではあるのですが、戦前はどのように 評価されていたのでしょう?

▲架空艦の一例 K-5@battleship_5さん制作の「戦闘指揮艦みまさか」。K-5さん曰く「ベースはピットロードのアーレイ・バーク級。砲を増やしたりヘリ甲板を煙突の間に設置し たりと、自由な発想で製作しました」とのこと

 松井 「模型のメディア論」でも触れましたが、実物があるもよりも独自性のあるものの方が評価が高かったのです。既に実物があるものはコンテストでも評価が低い傾向にありました。

 まいど! 実物がそもそも存在しない現代のキャラクターモデルに関してはいかがですか?

 松井 キャラクターモデルも設定資料のような考証が多くなり、スケールモデルと違うようで過去を参照しているという点で共通しているのではないかと思います。 例えばガンダムですと、初回放映から40年の間に設定資料がより繊細・先鋭化し、本当の歴史以上の歴史にも見える時があります。常に設定や過去の歴史を踏まえないといけないという意味ではスケールモデルとベクトルが同じではないでしょうか。戦前の創作模型的なエッセンスを組み込む事でより幅広い楽しみ方ができるのではないかと考えています。

▲設定が数多くあるガンダムもまた「過去という歴史を参照する」というベクトルでは、スケールモデルと共通している部分を持つのではないかという松井氏

 まいど! 現代の模型は過去を見ている事が多いのですが、冒頭で言われたような「未来を向いた模型」=創作模型がこれからの鍵になるという 事でしょうか?

 松井 そういう展開になりますね。更に付け加えさせていただくと、過去の歴史や物語が先行して模型を作るのではなく、「モノ」が先行して楽しむというスタイルも広まってほしいです。nippperさんでも既に記事が掲載されていますが、美術用品や日用品を組み合わせる事で、「モノ」 から生み出される楽しみがまだだ無限にあると思います。

まいど!
まいど!

艦船・航空機・AFV・自動車・キャラクターなどジャンル問わず楽しんでます。モデルアート社各誌でも活動中。