「模型のメディア論」の“第一部 歴史”が面白いぞ!! 僕の目の前にある模型は何だろう?

 松井広志著「模型のメディア論」。表紙からしてプラモデルいっぱいが出てきそうな本ですね! プラモの枠、僕らがよく「ランナー」と言われるものは、1番プラモを想起させてくれるものですね。

 2018年春に私の母校大阪市立大学の書評会で著者の松井氏と初めてお会いしました。私から見た松井氏は実に気さくな大阪のお兄ちゃん、書評会内の社会学者同士のアカデミックな話でもプラモ好きという事がにじみ出てくる方でありました。そして、このnippperの愛読者でもあるのです。

 この本、注意してほしいのは「模型のメディア論」であって、雑誌とかの「模型メディア」の「論」ではありません。商品のレビューやホビージャパンがどうとかモデルグラフィックスとかモデルアートがどうとか話ではなく、「模型がメディアになる」という事をテーマにしています。

 全体の構成は序章、1歴史、2現在、3理論、です。本を開くと序章にこういう文があります。

 「あるモノがどのようにメディアとして形成されるのか」(模型のメディア論 12ページ) ……はい、本を閉じようとしたあなた! その場合、序章は読まず「歴史」まで飛んで、歴史から読みましょう。冒頭だけで挫折してしまうにはあまりに惜しい、楽しく読める場所がたくさんあります。

▲この本は学術論文をベースにしつつも一般書籍です。正直な所、社会学、美術論、記号論、言語論辺りに興味が無い方は序章でつまづくかもしれません

 面白いところだけ読む、本の読み方としてそれで十分ですよね。私が面白いと思った「歴史」の部分は、近代(江戶時代)から現代の模型の歴史を学者の視点で記しています。メーカ ー視点や出版社目線ではない学者視点の模型の歴史というのはあまりなかったものです。

 歴史の章の中での驚きが、すでに「架空艦」(実物が存在しないもの)が、実物を正確に縮小したものよりも高い評価を得ていた時代があったという事です。主に戦前に未来を見て物を作る楽しみという価値観があったのです。

▲私のアイコン画像です。 完全な架空艦ではないけれど、実物は完成しなかった重巡洋艦「伊吹」

 架空艦の方が評価が高いというのはいったいどういう事だったのか? それを本書では「未来の形状を実現するメディア」と定義しています。それが戦中期間は「現在を体現するメディア」、戦後から「過去を再現するメディア」と総括しています。そして現代につながる情報消費社会やグローバル化について記しています。

▲僕たちのもっと前の人たちも、その時考えうる未来のものを想像し、創造して“楽しんできました”。その価値観は今も僕らの中にありますよね

 また、実物大模型のガンダム(本書出版は2017年なので、現在の横浜のものではなくお台場や静岡で展示されたもの)の考察も行われていま す。

 そして、最後に理論が出てきます。理論は記号論から始まって最終的に「モノ」に収斂します。今目の前にある「模型」という「モノ」ってなんなんだろうと。

 最後にnippperの主筆からぱたさんがご自身のブログでこの本の紹介で書かれている文を紹介させていただきます。実に上手い表現なので、そのまま引用します。

 ”もしあなたが模型好きで「私はいま、何と対峙しているのだろうか?」ということに自覚的でありたいのなら(残念ながら、模型を好きな人のなかには自分が何を大事にしているのかがわからないまま喧嘩を続ける人間も少なくありません)ぜひとも本書を読んでみてください。”

まいど!
まいど!

艦船・航空機・AFV・自動車・キャラクターなどジャンル問わず楽しんでます。モデルアート社各誌でも活動中。