

あなたの戦闘機はどこから? 私は『エリア88』から。いろんなジャンルのプラモデルを作るけど、いちばん好きなのはずーっと戦闘機。エリア88で知り、惚れた飛行機の姿を立体で慈しむという楽しみはこの漫画に出会ってからずっと変わらない。だけど、じつのところ私の心の中にある「エリア88とプラモデルの乖離」というのもまた、ずっとひっかかっているテーマだ。そしてそれがなぜなのか、先日刊行された『エリア88 モデリングミッション』における新谷かおる先生インタビューによってストンと腑に落ちた。
モデルアート社から発売された『エリア88 モデリングミッション』は、文字どおりエリア88に登場する航空機をプラモデルで再現した作例集である。風間真のクルセイダー、タイガーII、ドラケン、タイガーシャーク、X-29はもちろん、作中で活躍した数多のパイロットの愛機を模型で眺められる。
飛行機のプラモデルは縮尺模型であるから、実機に似ているのは当然。しかし、エリア88のオノマトペが被せられると「漫画と実機は全然違うな」ということが逆説的に明らかになる。漫画の登場機をスケールモデル的に表現する楽しさはもちろんあるが、作中で描かれた戦闘機の姿形は明らかに実機のそれよりも特徴が誇張されていて、私の脳裏にはむしろそちらが強く印象付けられている。

飛行機模型をキレイに作り、本書の付録であるパーソナルマークを貼り付ければ確かにエリア88に所属した”リアル”な機体が手に入るだろう。しかし作者の新谷かおる先生は冒頭のインタビューで機体の選択理由、デフォルメの根拠、そして自身の模型観についてあけすけに語る。
「描いていてやり過ぎだと思う」「ロールプレイングゲームと考え方が同じ」「キャラクターとして飛行機を描け」といったフレーズは、エリア88に登場した戦闘機たちがなぜ魅力的に見えたのかを裏付けてくれる。エリア88は”最初からカンペキな作品”ではなくて、急場しのぎで始まって手探りで作劇を膨らませ、スタッフたちの才能を結集しながら必死で編み上げられ、思いつきと作画の都合と締切と熱い飛行機への愛をどうにかバランスさせながら終点へと向かったことがひしと伝わってくるのだ。

このインタビューのおかげで、私は中東アスランの強く甘美な呪縛から逃れられた。もちろん心にエリア88を思い描くことはやめられないが、これから私は新しい気持ちで飛行機プラモを作れると思った。どんなところにどんな機体がいるのか。どんなパイロットがいかなる過去に囚われて飛ばしているのか。プラモデルにどんな気持ちを乗せて、自由なイマジネーションの翼を広げるのか。「あなたはあなたのエリアXXを背負って立ち、飛行機模型をステキなキャラクターに仕立てていいんだ」と、改めて本書に背中を押された気がするのだ。