ジオラマってめんどくさそう!リアルな街並みや戦場を見せようと思ったら、ものすごく巨大な地面と背景を用意しないと……って思うじゃないですか。
……でも「最終的に写真のフレームに収まった画さえカッコ良ければOKじゃない?」という考え方をしてみると、話は別です。
鉄道模型の専門誌、『RM MODELS 2020年10月号』(からぱたは鉄道模型も遊ぶのでわりと買う)を読んでいたところ、今月の特集がベラボーに面白い。鉄道模型やらない人にとってもヒントの宝庫となっているので、マジで買いです。
鉄道模型のジオラマ(レイアウト)はふつうに考えると超巨大な空間にレールをドバーッと敷いて、まるで地図をそのまま立体にするかのように作り込んでいくイメージが一般的だと思います。しかし、狭い空間でも情景を作り込むモジュール(一定の大きさに区切った土台に限定的に情景を作り込み、車輌を走らせる場合は複数を接続するという遊び方。走らせないで車輌を撮影するためのセットとして楽しむこともできるのがミソ)という概念があります。
今号は「走らせるか走らせないかは二の次にして、そこそこの大きさの土台に情景を作って写真を撮ってみよう」というのがテーマになっており、実在感のあるアングル、背景の処理まで含めたジオラマづくりのA to Zがびっしりと掲載されています。要は、「最終的に特定のアングルから覗いて実景らしく見えればいいのだから、360度どこから見ても破綻のない町並みや山の風景を作る必要はないのだ」と捉えることができるのです。
それでも絶対に必要な土、植物、水などのマテリアルやこれを作り込むためのツール、考え方や具体的な作業手順についてしっかりフォローされており、まずこれがすっごく勉強になります。
また、100円均一ショップの素材だけを使ったジオラマ例も掲載。こんな小さくてどうすんの?周りが見切れて実感を欠くのでは?と思いきや、完成したジオラマを使ったスマホ撮影では「え、めちゃくちゃ今すぐ100均行きたいんだが……」と思うほど雰囲気抜群の写真が得られています。
表紙のキハ110が鉄橋を渡っているシーンも「ズルい!」と思わず叫んでしまうような方法で撮影したというタネ明かしがされていたりして、「視点を限定して作り込む箇所を決める」(=視点を限定するにもトンネルやビルといった構造物を使ったり、線路がカーブしているのをうまく使ったりといろいろな方法があって目からウロコ!)「前景と背景を実感的に見せる」といった思考法が自分にガンガンインストールされていくのがわかります。
じつは、今月号のアーマーモデリングの特集も「世界の書き割り」と題して主題を引き立てるダイオラマにおいて背景の構造物がどうあるべきか、というテーマになっています。この2冊をクロスするように読んでいくと、たとえばこのnippperでも超人気ライターであるC重油さんのように「前景/主題/背景」をうまくコントロールしたジオラマ(置くだけの「置きラマ」でもいいんだぜ!)的な手法を一気に自分のものにできるはずです。
ジオラマを作るのならば、世界の何もかもを再現しなければいけない……。そんな不可能っぽい思い込みをサーッと晴らしてくれる最高の2冊。この週末に組み合わせて読んでください。一気に写真の撮り方、模型の魅せ方が変わるはずです。みなさんも、ぜひ!
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。