ガンプラだから楽しめる、SDとリアル頭身の間を軽々と飛び越えるギミックの話。

 SDガンダム。

 人の頭身を模していたモビルスーツを頭でっかちにアレンジした(「SD」というのはスーパーデフォルメの略だ)この一大シリーズは、長きにわたり独自の世界を生み出し続けている。中でも『BB戦士』と『元祖SDガンダム』の2大ブランドはガンプラの入り口として大きく機能していた。物心つく頃には既にSDガンダムがスタートしていた私も、最初に作ったプラモデルはギミック豊富で遊んで楽しいBB戦士だった。SDガンダムから入った身からすれば、当時のSDでない元の頭身のガンプラは「お兄さんのプラモデル」であり、作るのが難しそうで少し距離を置いて見ていた。

 そのSD体型とリアル体型(SDでない元の頭身)の壁を取り払う存在がBB戦士に誕生したのが26年前。BB戦士No.130「機動武者大鋼(だいはがね)」だ。SD体型からリアル体型に変形するそのギミックは幼心に大変な衝撃で、何度も何度もその変形ギミックをその手で堪能していた。

 時は戻り現在。SDガンダムは今も活躍している。

 現在放送中でクライマックスを迎えた『ガンダムビルドバイダーズ Re:RISE』を始めとしたガンダムビルドシリーズは、モビルスーツではなくガンプラをモチーフにしたアニメシリーズで、主人公パーティーにSDガンダム使いがいるのが恒例となってきた。そしてこのSDガンダムもまた、ギミックの宝庫なのだ。

 「ガンダムビルドファイターズトライ」に登場したスターウイニングガンダムは大鋼と同じくSDからリアル体型に変形するギミックを持つプラモデル。ほとんど余剰パーツを出さずに2つの形態を行き来できる。長くしなければならない手足のパーツはどこから来るのか、大きな頭はどこの役割を持たせるのか。リアル体型に変形できるSDガンダムは今まで数多く出ているが、どれもその変形方法は異なっている。1作目の大鋼からSD頭部の隠し方は「2つに割って肩アーマーにする」と秀逸だし、スターウィニングガンダムはSD腕部の収納方法に驚くだろう。ぜひ写真を見比べてこのパズルを想像してみて欲しい。そして存分に想像した上で組み、変形遊びをする。そこで初めて気づく楽しさがきっとある。

 変形で最もダイナミックに変わる頭部は、作っていても遊んでいても愛おしくなってしまうポイント。リアル体型の小さい頭部をSDの大きい頭部がどう包むのか。アイデンティティとなる額のブレードアンテナはどのように引き継ぐのか。どこのパーツがどこになり、どのパーツはそのままなのか。頭の中で遊ぶパズルは、いつになっても楽しいものだ。

 最新作の『ガンダムビルドバイダーズ Re:RISE』ではガンドランダーモチーフ(!)でドラゴンに変形するSDガンダムが登場。そしてクライマックスで主人公のガンプラたちに仕組まれていた驚天動地のギミックが明らかに。「おいおいマジかよ」と、思わず(積んであった)ウォドムポッドの説明書を確認してしまった。こんな楽しみもまた、ギミック満載ならではのものだろう。

 ギミックの楽しいプラモデルは、力まずに想像力を刺激される楽しさがある。プラモデルでありながら受動的に味わえるこの感覚は、大掛かりな作品を作る合間に心地良い緩急を生み出す。YouTubeのガンダムチャンネルにはちょうど今までのビルドダイバーズや過去作が見放題だ。プラモデルが活躍するアニメを観ながら、遊んでみてほしい。

ぬのむー
ぬのむー

SDガンダム七人の超将軍世代の雑食モデラー。
ガンダムとジャニーズ大好きメンサ会員。RealSoundTech等でライターしてます。