布か、プラスチックか。センパイの黄色いパーカーがちょっとだけ叶えた「ドールにおける服の夢」の話。

 待望の新製品、フィギュアライズスタンダード ホシノ・フミナを皆さんは手にされただろうか?

 私はなんとか入手し、組むことができた。ファンとしては、ようやく納得のいくサイズの可動するフミナ先輩が手に入ったなぁ、と感慨もひとしおといったところである。

 本キットで一番の見どころは、なんと言っても、黄色のパーカーだ。私は組みながら感動に震えてしまった。なぜならこの「服のプラモデル」は、ドール服が目指す夢の一端をプラスチックによって実現していたからだ。

 ランナーの真ん中に配された黄色のランナー。これがそのパーカーである。

 胴体部分は4パーツ構成。左右の前身頃を首回りのフードでとめる形だ。薄く複雑な形状だが、ピタリとはまり、ずれることもない。なかなかに頑丈で、簡単にばらけることはない。袖は独立した腕のパーツになっており、パーカー着用時/非着用時で差し替える仕様となっている。

 パーカーのパーツを着せると、劇中イメージそのままのパーカー姿のフミナ先輩が現れた。身体のラインに沿って布が流れ、自然にできるシワも造形されている。脱着可能にしてこの素晴らしい再現度。これこそが長らくドール服が目指してきた夢なのである。

 「いや、脱着ができて可動もする服なら、普通に布の服でもいいのでは?」と思われる方もいるかもしれない。……では、このフミナと同スケールとされているパーカーを着せてみたらどうなるだろうか。

 現在、1/12サイズ(14~15cm程度のフィギュアのサイズ)の衣服はドール服の一ジャンルを形成している。この服はドール服メーカー最大手のアゾン・インターナショナルの製品だ。さて、これを先ほどのフミナに着せてみよう。

 なるべくきちんと着せてみたが……あまりしっくりこない(ダボッとしたオシャレ、というのも確かにあるのはさておき)。これは仕方がないことだ。この服は本キットで採寸したわけではない。より多くの1/12サイズのフィギュアに合うサイズで作られているのでやや余裕がある。また、このパーカーは前を閉じることができ、フードも大きめの頭を覆うことができるサイズなので、着せ方によってどうしてもちぐはぐにならざるを得ない。

 では、組み上がったホシノ・フミナで採寸し、布地を選んで作れば、より質感の高いパーカーが作れるのだろうか?

 おそらく、作れるだろう。それでも、本キットのパーカーほどの再現は難しい。一番大きな理由は、布の厚みだ。
通常の人間サイズなら無視できるものだが、1/12サイズだとそうはいかない。着る方のサイズが小さくなればなるほど、布の厚みが無視できなくなってくる。布だけではない。糸や縫い目の大きさも1/12サイズにはできないのだ。
1/12サイズでイメージ通り、ジャストサイズで可動ギミックをを妨げない服を作るのは非常に難しい。そんな「イメージ通りの服」が、本キットではプラスチックパーツとなって同梱されているのである。ドール服の夢の一端が叶えられていると思う所以である。

▲ややオーバーサイズだけど、お似合いです。

 ただし、本キットのパーカーが叶えている夢は「形状の再現度」という一端である。他のプラモデルに使い回しができないし、布の質感は望むべくもない(塗装によって少しは変えられるかもしれないが)。ゆえに、「簡便なカスタマイズパーツ」としてのドール服の役割は放棄されている。ドール服であれば、着せるだけで、誰にでも、短時間に、簡単にその服装へとカスタマイズできる。しかも同サイズのプラモデルに着回せる。

 造形の技術がない人でも、手軽にカスタマイズが楽しめる。これこそが布製ドール服の大きなメリットだ。とはいえ、本キットのパーカーはドール服と競合するものではない。我々はこのプラスチック製パーカーを着せてもいいし、着せなくてもいいし、別の布製ドール服を着せる自由も持っている。……つまり、着せ替えを楽しむとてもよい選択肢を一つ手に入れた、ということだ。ドール服の夢を別の方向から実現した「服のプラモデル」をぜひ堪能してもらいたい。

トミすけ
トミすけ

アラフィフ紳士。本業は会社員の週末モデラー。キャラクターモデルを中心に、気に入ったプラモデルを買ってきてはマイペースで作っています。早く作れるようになりたくて、日々精進中。