
この体表、なんだかうまそうでしょ。ぷっくりしていて、もっちりしている。恐竜の皮膚を見て抱く感想として正しいのかどうかは知らないけど、肉食恐竜から見ればもっと直接的に「うまそう」に見えたのかもしれない。これがタミヤのクリックロックでプラモデルになったフクイサウルスです。

クリックロックは接着剤を使わず、パーツ同士をカチッとはめ込んで完成させるタミヤの新しいプラモデルシリーズです。先に発売されたフクイラプトルは肉食恐竜でしたが、こちらのフクイサウルスは植物食。パッケージには名前の由来になった福井県が地図で示され、「ここです!」とばかりに若狭湾まで描かれています。ランナーと説明書、それに箱の中へ敷けば背景にもなる紙。中身はものすごくシンプルです。ランナーを包む袋までホチキスを使わず、手ですぐ開けられるようになっているのもうれしい。

説明書を読むだけでもかなり楽しく、フクイサウルスをはじめ同じ時代に現代の福井あたりで暮らしていた恐竜たちや、その環境まで紹介されています。そして当然のように登場するのがフクイラプトル。どうやらフクイサウルスは、こいつに食べられていた可能性があるらしいので、やっぱりうまそうに見えるのは気のせいではなかったのだ。

パーツはほとんど1枚のランナーに収まっています。地面と、恐竜の大きさを実感するための人間まで入ってこのボリューム。しかしフクイサウルス本体を眺めると、けっこう細かく分割されていることに気づきます。接着剤を使わないのだから、もちろんそれぞれのパーツには固定するためのピンがあります。前後を逆に取り付けないようピンの太さが変えてあり、尻尾の接続部には丸い穴の一部だけに凹凸が設けられています。考えずに組んでも正しい場所へ、正しい向きで収まってくれます。そしてピンを押し込めばギュッと止まり、簡単には抜けません。

ここまでは「親切なプラモデル」の話です。でも、フクイサウルスを組んでいて本当に驚くのはそこではありません。胴体や脚のような、ヌルッとした生き物の曲面同士がぴたりと合うし、完成するとパーツの境界がほとんど気にならなくなります。硬い機械ならパネルラインや部品の境界へ分割線を逃がせますが、恐竜の腹や腿にはそんな都合のいい線はありません。それでも接着剤なしで、ひとつながりの肉のように見えるようになっています。パーツの「合いかた」がとんでもなく気持ちいいのです。

考えてみれば、タミヤのプラモデルでは、兵士の腕と胴体や、航空機の複雑な曲面など、「組めばひとつの形に見える」という経験を何度もしてきました。でも今回は接着剤すら使わないという条件で、恐竜の腹と腿がひとかたまりの肉に見える。クリックロックで生き物を作る意味は、ここにあるのかもしれません。

クリックロックシリーズでは1/24ワーゲンバスに続き、さらにホビーショーにはポルシェ911も姿を見せました。ワーゲンバスではボディ上下の色分けやメッキモールを別パーツにして、それぞれが気持ちよく合わさります。カーモデルなら、クリックロックという仕組みの便利さも、その精度もかなり理解しやすいでしょう。
これもまたタミヤの力を示すものですが、フクイサウルスにおけるやわらかい接合部のタッチはまだまだタミヤができることの多さを示しています。タミヤの凄みを感じるなら、このフクイサウルスをこそ見て、そして組んでみるべきなのです。