
大和、零戦、ティーガー戦車。いずれも多くのメーカーがその人気にあやかってプラモデル化を熱望するスーパースターです。言うてみりゃスーパースターの威光によってプラモデルの側が照らされ、輝いているわけです。それじゃあオーストラリア海軍の駆逐艦 ヴァンパイア、ダグラス F4D スカイレイ、フランスの軽戦車 AMX-13となると、これはもうガチゴチのミリタリーマニアじゃない限りパッとカタチが出てこないもんばかりです。
しかしタミヤのプラモデルに慣れ親しんでいれば「おお、プラモデルで見たことあるよ」となる。プラモデルというのはなにも人気者をキットにするだけじゃなく、「世の中にはこんなものもあり、それぞれ固有の生い立ちとストーリーを持っているのだよ……」ということを教えてくれるメディアでもあるのです。

日本にタミヤあり。そして日本にフクイラプトルあり。タミヤが新しくプラモデルにした恐竜は、ティラノサウルスやトリケラトプスといった世界中の子どもが知っている超スーパー有名サウルスではありません。そもそも福井ってどこやねん……ということをタミヤはちゃんとパッケージに図示し、日本でも肉食恐竜の化石が産出し、それが新種と認められたんですよということをアピールすることにしたわけです。

タミヤのプラモデルは誰が組んでもカタチになります。しかし、世界中のユーザーにタミヤという企業、そしてフクイラプトルという誇り高き日本の恐竜を知ってもらうにはさらに一歩踏み込んだユーザーエクスペリエンスが必要だと判断したのでしょう。誰もが手に取れる低価格で、接着剤を使わずとも組めるようにすべきだという判断をし、タミヤのスケールモデルとしては珍しくスナップフィット方式(タミヤの新しい表記として「クリックロック」)を採用しました。

少々指先のチカラは必要ですが、パーツをきちんと切り取り、然るべきところにギュッとハメれば合わせ目はほとんど見えなくなるほど精緻に組み上がります。足型の付いた台座に嵌め込む構造は足のパーツを貫通したピンによって強度と見栄えを両立させるなど、限られた面積の金型の中に恐ろしいほどのアイディアが注ぎ込まれています。

サイズ比較のために入っている人間の親子のシルエットは底面が完全な平面になるようスライド金型を使用。マニアックな話をすれば、ここを通常の金型で成形すると底面中央に金型の分かれ目となるパーティングラインが入り、そこを中心にわずかな傾斜を付けることが求められ、底面が平面ではなく浅いVの字になってしまいます。机の上に置いたときにカタカタと不安定な感じを与えない……という細かなところまで気を配った設計と言えましょう。

プラモデルになったことで、フクイラプトルはタミヤの輝かしい製品のひとつとなり、ハイクオリティな組み立て体験とともに世界中の模型店や博物館に並ぶことになります。組み立てた人はフクイラプトルの固有の生い立ちを知り、新種と同定されたストーリーを知り、福井を、日本を知ることになります。小さくて手頃で簡単なプラモデルですが、それが未知の恐竜を輝かせ、たくさんの人の想像力を刺激する。あなたもぜひフクイラプトルを発見し、目撃し、その楽しさを誰かに伝えてください。