
タムタムの店頭で、テカテカと変化する光とともにマンタとシュモクザメがうにうに動いていたんですよ。どちらもメカになっていて、どちらもたいへんカッコいい。もちろんマンタも捨てがたかったのだけれど、シュモクザメという生き物はそもそものカタチがカッコいい。横にドーンと広がった頭の両端に目があり、その後ろから細長い身体と尻尾が伸びている。そこへ光とメカの成分を足され、アタマと尻尾をヌルヌルと振っている。うーん、こっちだな。9900円を払って持って帰りました。ようこそ我が家へ。
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ROKRの親ブランドであるRobotimeという名前を私が最初に見たのはInstagramの広告だったと思います。レーザーカットされた着色済みの木材を組み立てて、小さな建物や街並みを本棚の隙間に出現させるブックヌック。それから、スチール球が複雑な機械の中をカラコロと走り回るマーブルランのキット。こないだのワンダーフェスティバルにもブースを出していて、お客さんもたくさん入っていました。しかし私のなかではずっと「プラモデルとかフィギュアとはちょっと違うところにある、組み立てホビーの亜種」という認識だったんですよね。それがタムタムに行ったら、いきなり猛烈にプラモデルみたいなものを売っていると知り、びっくりしたわけです。

箱を開ければ、メタリックグリーンやガンメタリックに成形されたランナーがドサドサ出てきます。細かなマーキングも最初から入っている。透明パーツもある。見た目だけなら最近のSFメカ系プラモデルそのものです。モーターと基板と配線、小袋に入った大量のネジ、シャフト、リベットが「動いて光りまっせ」ということを教えてくれる。

さらにハコの中にはさらにドライバー、スティックヤスリ、爪切りみたいな形をしたミニニッパーまで入っている。このニッパー、もちろん模型専用のよく切れるニッパーには到底及ばない性能です。でも入っていることが重要なのだ。これを買った人が「ニッパーって何を買えばいいんですか?」というところでまた模型店に足を運んだり、ドライバーどこやったっけ……と家の中をひっくり返さなくてもいい。切った跡が気になればヤスリもあるし、箱を開けた時点で、もう逃げられないっちゅうわけ。「今日あなたはこのサメを完成させます」というメッセージだな。

ネジはたくさんあるけれど、工程に応じて袋が分かれています。説明書には「ここではこのネジを使います」という原寸大の絵まで描いてあるので、袋から出して重ねれば間違えようがないな。これはタミヤの動く模型でも昔から使われている親切な方法ですが、ROKRのキットを組んでいると「絶対に完成させてやっからな!」というメーカーの圧をずっと感じます。塗装? してあります。マーキング? 入っています。電子工作? 基板は完成していてコネクタを挿すだけです。工具? 入れました。どのネジかわからない? 原寸で描きました。至れり尽くせりかよ。しかし、だからといって組み立てが全部パチンパチンとハメるだけなのかというと、そうでもない。シャフトは硬いもんを見繕って圧入しなきゃいかんし、リンクはリベット留め。小さなネジもたくさん締めます。

仕組みはべつに難しくありません。歯車を百枚組んで永久機関を作るわけでもなし、「ああ、回ってるものをこいつで押したり引いたりしてるから尻尾が振れるのね」と見ていればわかる程度のものです。私はこれを組んだからといって機構についてひとつ賢くなったという感じもしない。この「べつに教材だというわけじゃない」ってのが、このプラモデルなんだかどうなんだかよくわからないものの正体をいっそう不思議なものにしています。
歯車4枚とモーターだけ見たら、そんなに大した仕組みではありません。それが塗装済みの外皮に包まれ、ビカビカ光り、マイコンで動きに緩急が付き、重くて質感のいい台座に載せられ、金属のスイッチにそっと指を触れると目を覚ます。そりゃもう、「俺、すげえもん組んだな」という気分になります。

透明パーツの設計も巧みです。一枚のパーツのなかにツルツルの部分と白く曇った部分が混在していて、なんだこの仕上げはと思った。しかし光らせてみると意外なところがビカビカ光ります。内部のチップLEDをいくつも配置するのではなく、必要最低限のスペースに光源をまとめておいてから透明な樹脂を反射しながら通って、必要な場所が光るようにしています。

尻尾はブンブンと同じ速度で振り続けるのではありません。しばらく動いたところで回転数が上がり、またしばらくすると落ち着くという演出があり、それに合わせて身体の光り方まで変化します。点滅のテンポも色も変わります。ただのモーターとリンクだったものが、電気の制御を加えられた途端に「なんかこいつ、いまテンション上がったな」と感じられる動きになる。これがじつにうまい。

完成して電池を入れるまで、私はずっと少し不安でした。基板やLEDが載ったユニットどうしを細い配線で繋ぎ、そのコードを外装の中へ収めながらどんどんサメを閉じていくのですが、途中でまとめて通電試験するような場面がない。どっかで線を噛んでたらどうしよう。コネクタが外れてたらまたバラすのか……? と、いちいち怖いんですが、最後のネジを締めて、ずっしり重い専用台座に載せるほかない。台座のボタンはメカニカルなスイッチですらなくタッチセンサーです。指で触れると……動いた!光った!しかも店頭で見たときと同じように、ちゃーんとキレイに動いてくれました。ひと安心だよ。

この感覚は普段作っているプラモデルとも違うし、LEGO Technicとも違う。プラモデルならデカールを貼るとか色を塗るとか、作る人の判断を完成品に込めることもできます。また、機械仕掛けの教材ならばリンクや歯車を組むことで「こういう仕組みなんですよ」を理解させることに意味があるかもしれません。でもROKRのシュモクザメは、そのどちらにもあんまり興味がないように見えます。説明書どおりにアッセンブルしてください。ちゃんと切って、ちゃんとネジを締めて、シャフトを押して、コードを挟まないように蓋をしてください。そうすればあなたの机の上に、プログラムどおりにヌルヌル動くメカ・シュモクザメが出現します。ユーザーに機械の理解を要求せず、機械を完成品として発現させるというのは、ビルドではなくアッセンブルの歓びだけに特化した商品形態だよな。
もっとおもしろいのは、じゃあこれを最初から完成品で売ってくれたら嬉しいかというと、たぶん違う、ということ。私はこのサメの内部に何が入っているかを知っていますが、機構を完全に理解しているわけじゃありません。でも、機械を作ったという実感だけは残っています。しっかりと設計されたプロセスがあって、最後に驚くようなメカができる……という体験は、高級なゾイドというか……最近流行りのIKEA効果というか……。

最近の中国発のモデルを見ていると、塗装や印刷、色分けや表面処理によって「めちゃくちゃ上手い人が作ったみたいなもの」を、誰でも手に取れるキットへ落とし込もうとする欲望を強く感じます。このシュモクザメもそれに近いものがあります。しかし完成品の見栄えだけではなく、「電気で動く機械を自分で組み上げちゃった」という過程が痛快なのです。

これは別に新しい発明でも新しいジャンルの誕生でもありません。モーターで動く模型なんて昔からある。メカニカルパズルも電子工作キットもある。シュモクザメ型のロボットだって、どこかを探せばありそうです。ただ、それらの遊びが重なったところに、いまの成形技術と印刷と電子制御を持った「ランナーから切って組み立てるもの」がほとんど偶然の積み重ねで成立している。プラモデルに見えるけど、プラモデルと言い切るにはなんだかちょっと違う。この違和感を、ぜひ皆さんにも味わってもらいたいのです。
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