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【レビュー】タミヤMMの思想と楽しみ方が樹脂化されたレジェンドプラモ/「タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュア No.26 ジェリカンセット」

 1970年代の前半、タミヤのミリタリーミニチュアシリーズ(MM)は大ブームを起こしていました。その当時の勢いを感じられるアイテムのひとつが、1973年に発売された「ジェリカンセット」です。

 戦車にしてもその他の車両にしても、動かすために必ず必要なのが燃料です。戦場に都合よくガソリンスタンドがあるわけでもなく、さらに軍隊は戦況に合わせて動き回ります。なので人類が戦闘車両を陸戦で使うようになって以降、移動する部隊にどうやって燃料を補給するかは悩みの種となりました。そんな悩みから生まれたのが、燃料を携行・輸送するための各種の缶です。車両にこれらの缶を積んで移動し適宜補給を行うことは、地上部隊にとって非常に重要なこととなりました。

 ……というのは当たり前の話なんですが、戦車模型においてそんな地味なアイテムが商品化されたのは驚くべきことと言っていいはず。確かに大戦当時の写真にはジェリ缶を積んだ戦車やドラム缶からの燃料補給の場面が色々と写っていますが、あくまでプラモデルにおける主役は戦車。脇役も脇役、「なんでこんなものが?」と言いたくなるジェリカン・ドラム缶がプラモデルとして発売されたという事実からは、1970年代前半のMM人気の凄まじさを感じます。「戦車模型といえばモーターで動くもの」という常識を覆し、「動かない戦車模型を使って情景を作ろうぜ!」という新たな遊びをあの手この手で啓蒙し、結果としてヒットさせたMMならではの事態です。

 このキットの箱を見ると、ジェリカン・ドラム缶のなんたるやをかなり頑張って説明している点に気づきます。箱の表面を見ると缶類にのみ色がついており、それを持つ兵士は簡単な線画のみ。パイプを使ったドラム缶からジェリカンへの燃料の小分けや、戦車への補給の様子、はたまたバリケードとしてのドラム缶の転用まで、このキットの使い道を視覚的に把握できるパッケージになっています。

 箱の裏側には、テキストによる解説が掲載されています。米軍とドイツ軍に見られるジェリカンの形状の違いから、実際の使い方や車両への搭載方法、塗装のルールまで、「こうやって遊ぶといいんじゃないでしょうか」という解説が事細かに書かれています。実際のところ「いろんな色があるので好きに塗ればいいし、好きに積んだらいいですね」くらいの話ではあるんですが、そんなぶっきらぼうで不親切な態度では、誰も情景なんてめんどくさいものは作ってくれません。丁寧な解説やイラストから「じゃあこうしてみようかな」というアイデアが浮かんでくるようになっており、なるほどプラモデルを買う時、我々は未来や可能性に対してお金を払っているんだな……と納得できるようなパッケージとなっています。

 1973年のプラモデルなので、中身は今見ると牧歌的。現在のAFVモデルについているジェリカンは取手や注ぎ口が別パーツになっていたりして、ジェリカン1個が4〜5パーツの構成だったりすることもしばしばですが、この時期は潔く左右に真っ二つです。それでもドイツ軍型と米軍型がセットされていて、ドイツ軍の方が歪み防止の凹みの入り方がひと手間多い形状になっていることがわかります。ジェリカン1個からでもお国柄が伝わってくるのが面白い。

 改めて見ると、ボコボコに凹んだドラム缶とまっさらでツルツルのドラム缶が入っているのはなかなか嬉しい。「まっさらのドラム缶だけじゃあ、情景が作れんでしょうが!」というタミヤの意気込みが伝わってくるようです。

 バケツの形状もまじりっけなしの「ザ・バケツ」といった風情。それでもハンドルが別パーツになっていて、表情をつけられるようになっているあたり芸が細かい。時代を感じるのは間違いないですが、しかしちゃんと情景での使われ方を想定した内容になっているあたり、やっつけの色物ではなく真面目に考えて企画・設計されたプラモデルであることがわかります。

 今でこそAFVモデルの世界では、車両やフィギュアではない「アクセサリー」のキットが当たり前に存在しています。が、1970年代前半にはアクセサリーどころか、モーターで走らない戦車模型自体が新しかったはず。シリーズ発足からたった5年ほどで「じゃあ車両に乗せたりフィギュアと組み合わせたりして使う”アクセサリー”があったら嬉しいよね」という発想にまで辿り着いている点からは、MMの誕生というビッグバンがいかに激しいものだったかがわかります。もちろん現在のAFVモデルのアクセサリーとして使ってもOK。往時のMMのパワーを受け取れるアイテムです!

しげるのプロフィール

しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

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