
傑作の数多いタミヤの航空機モチーフキットにあって、1970年代に初版が発売され、1991年には武装が追加されてボリュームアップし、現在も店頭に並ぶ定番キット「A-10A サンダーボルトII」。少ないパーツ数で再現された印象的な機体フォルム、凹凸併用のモールド表現などなど、年々と精緻を高める後続メーカーによる同モチーフキットがリリースされている今でも、その魅力は褪せることがありません。そんな魅力は中身だけでなく、タミヤらしいそのパッケージ/ボックスの構成にも現れているのでした。

塗装手法の選択、モチーフをどのような色合いの調子で塗っていくかを思案するのは、模型製作の楽しいポイントのひとつですよね。一方で、初めて作ってみようという際などは何を参考にしていいのか、それでいったん手が止まってしまうこともあると思います(資料を集めて眺めてみたり、その時間ももちろん楽しいです)。模型なので、好きに塗ったらいいというのはその通りなのですが、最初の背中を押してくれるならそれに越したことはありません。そんなヒントをパッケージでも与えてくれるのがタミヤのキット。そして、数ある名作の中にあって外すことのできないのが「A-10」です。今なら、手元のスマートフォンやPCで検索をして、モチーフの実機画像や数々の模型作例なども参考にすることができる便利な時代。しかし、便利ゆえに色々なイメージが次々と出てくるので、それはそれでどれを今回の基準にしたらいいのか…となります。前述のとおり、好きに・自由に塗ったらいいのです。ですが、それってシンプルながら最も難しかったりすることもありますよね。そんな時、今でもタミヤのパッケージ/ボックスは、これはどうですか。と色合いの選択肢を示してくれるのです。

まずは、A-10をモチーフに描かれた作品として、今なおダントツのかっこよさを誇る迫力のボックスアート。中近東・湾岸諸国を思わせる色彩を背景にしながら画面の横いっぱいに描かれたメインの機体、これに後続する2機目、3機目が配置されることで構図の奥行きを生み出す絶妙な配置です。そして、背景と緑の機体色とのコントラストは、このキットがボリュームアップされた90年代初頭の世界情勢を物語っています。欧州地域でのソ連・ワルシャワ条約機構軍の機甲部隊を主たる仮想敵に、NATO軍機にも近似する森林系の迷彩パターンが標準となっていたかつてのA-10。時は経ち1991年、米ソ冷戦の終結を目前に勃発した湾岸戦争では、米軍および多国籍軍による強力な航空優勢の中で、砂漠地帯には一見すると不釣り合いな森林系迷彩の機体が「砂漠の嵐作戦」へと投入されました。
そんなA-10も、以降は米軍をはじめ西側各国の機体がいわゆる迷彩模様系からグレー系のロービジパターンへと移り変わっていく中で、機体の改修も受けつつ順次塗り替えられながら2001年のアフガニスタン、そして再びの対イラク戦争を経て、その後10数年にわたって続く武装勢力との非対称戦争でも運用され続けていくのでした。そんなA-10の在りし日の色合いと風景を、その同時期に劇的な筆致で描いたボックスアートが放つ存在感は、世代を越えて目を惹くものとなっています。

そんなメインのボックスアートに続くのは側面塗装図です。こちらは横一から機体を描写しつつ、陰影や色の起伏をもって着彩され、奥行きをもたせた仕様。筆塗りの参考にもなるテクスチャーに溢れたボックスアートに対して、こちらは意識的にカタログ/図鑑的なテイストで、エアブラシ塗装の際の迷彩境界のぼかし具合をイメージすることができます。

さらにもう一方には、迷彩の境界をくっきりと塗り分け、各色を平滑にした機体の上下面図。下面の兵装フル搭載状態も配されてキットのボリュームも示されています。同梱の組み立て説明書にはこの上面下面と同じ線で側面図も追加されています。こちらはパターン確認用に迷彩境界のぼかしが入っているもの。上下面図の並びには武装とパイロットがあり、塗料番号を見なくても直感的に塗れるようになっています。

組み立て説明書はモノクロ印刷なので、モチーフの森林系3色迷彩各色の配置をボックスのものとつき合わせて確認していくことができます。この確認をする際にいったりきたり見るのもまた楽しいのです。これをしているとどんどん頭にパターンがインプットされるので、他のモチーフ、それこそSFや架空のメカなどを考える際のきっかけの引き出しとなってくれます。

最後は実機写真です。A-10の特徴のひとつでもある昇降部分がハッチオープンとなった駐機状態で、主脚も見ることができます。ボックスアート、塗装図と飛行状態となっているので、ここで駐機状態を選んでくれる心配りが嬉しいです。これまでの2種はそれぞれの鮮やかさで提示されていますが、実機写真はマットで燻んだまさに実戦機という姿になっています。

パッケージ/ボックスに配された機体を一望すると、傑作機の在りし日の姿には、それぞれの意図、そして実機写真も含めてさまざまな色合いがあるということを示してくれます。模型としての縮尺の世界に今回の自分はどのイメージを取り入れて表現するのか、どれを組み合わせていくのか。さあ、どうぞ楽しんでください、そうしたタミヤのメッセージをより強く感じられますよね。そして、ボックスアートだけでも買って飾りたくなるわけなのですが、冒頭のとおり、もちろんキット本体も素晴らしいのです。次回は作って塗装したくなる名作A-10の中身を見ていきましょう! お楽しみに!