「カーモデルを手にしたはずなのに、なんかミリタリーミニチュアのデカい版を組んでいるみたい」と、不思議な気分にさせてくれたのがタミヤ『1/24 トヨダ AA型』だ。実車が1936年に発表されたクルマとなり、タミヤの1/24スポーツカーシリーズにおいては現在定番流通しているキットのなかで最古のモチーフ。そう、時代背景としては大戦期のタミヤMMと同じ時期の車両となるので、機械の構成やシルエットが似通うのはあたりまえの話ではある。
パッケージに「トヨタ初の意欲的な純国産乗用車」と記されているとおり、トヨタ自動車にとってはひとつのアイデンティティーとも言えるトヨダ AA型。前回紹介したトヨタ博物館においてもフロントマン的な場に鎮座している。キットの箱を開けると「思っていたよりデカい!」と思わず発してしまうボディが早速ダイナミックだ。フロアがフロントフェンダーと一体になっているのは実車を模してなのか? それともタミヤの金型の都合なのか? さっそくトヨタ博物館で説明して欲しい疑問が浮かぶ。

実車でもシンボリックな「豊田 – TOYODA」の意匠。エッチングパーツをはじめメッキパーツや水転写デカールでしっかり再現されている。フレッシュな瞬間接着剤を用意しておこう。

近年のクルマには見られないクラシックな様式が溢れるキットで楽しいのだが、このドライバーの力の入れようには唸った。この紳士は”ニキ”なの? “オジ”なの? 激動の時代といわれる昭和初期の男たちは、波乱の人生すぎて老け顔が多かったのかも。その雰囲気も含めてハンドルやアクセルに添える手足、ベンチシートに沈み込むように整えられた背中など、このミニチュアの精巧さはかなりのハイカロリーだ。このキットの神パーツといっていい。

このAA型のキットの凄みは車両考証とその再現に留まらない。このフロントアクスルのステアリング可動部なのだが「あれ? 上下の軸が片方入らないけどいいの?」と半信半疑で接着したらピッタリ嵌合するし、程よい可動の渋みが生まれていた。こういったちょっとしたところに工夫を込めるのが大変タミヤらしいなと。

下回りのラダーフレームを貼っていくのに難はなく楽しいばかり。パーツ数も必要最低限な印象だ。AA型が乗用車といっても機構的にはこの時代のトラックと大差はなく、それもあって前述のとおりデカいタミヤMMを組んでるみたいな組味だった。そしてこのキット、ボディとシャーシがホワイト単色のプラ成形色だと思いきや、ラダーフレームとかはオフホワイトとなっている。なんなんだろう、この微妙なコントラスト。このキット最大の謎である。

タイヤをつけて机に置きなおすと「スンッ」と静かに着地した。タイヤのゴムの制振だけではなく、サスペンションの仕事を感じたのだ。実車のリーフスプリング(板バネ)を模したことにより、プラスチックであってもその形状で得たしなやかさで制振しているというわけだ。車軸の真上を指で押し付けるとちゃんと沈み込むので、サスペンションの可動域を確かめることができる。「機械の形状を模すると、機械の性能も得てしまう」というのは、スケールモデルが持ちうるユニークさだと思う。

今回、実家がトヨタ博物館が近いということもあり、この機会に年間パスポートを購入。週1、2回はAA型の展示をながめながらタミヤのキットを組んでいくという贅沢な遊びをした。なのでキットは無塗装素組であっても「完全塗装されたホンモノをいつだって見られるんだから、模型は真っ白でヨシ!」という力強い決意のもと、タミヤのAA型を快速ゴールできた。

そう、このトヨタ博物館のチケットが大人1,200円のところ年間パスポートが個人だと3,000円。ファミリーカード(家族計5名まで)だと5,000円という破格っぷり。「クルマがお好きって良いシュミをお持ちですね」と全肯定されに是非あなたも。カーモデルと向き合う準備運動がしっかりできるはずだ。