

プラモデルという趣味の面白さのひとつに「ゴール(完成)は自分で決められる」というものがあります。パーツを組んで、塗って、そこがゴールというのがオーソドックスですが、組んだところでゴールにしてもいいし、ワンポイントだけ塗ってゴールとしてもいい。そのどれもが正解でエラい訳です。
ぼくはと言えば、その時の気分であったりモチーフへの思いだったりでゴールを変えるのですが、その場合「まぁ、これは組んでよしとするか」とか「ここ塗るだけで十分いい感じじゃん」とか、言ってしまえば「このキットはここまででオッケー」という消極的な選択としてそれらのゴールを設定していたのでありました。
しかしこの広目天、パッケージを開けて衝撃が走りました。収められているパーツたちを一目見てすぐに「組んだらゴールとしよう!」と決断しました。こんな気持は初めてです。

まず、独特なパーツ分割からワクワクします。特徴的な耳パーツや、そっけないところに荒々しい流木のようなパーツを貼り付けていくと立ち上がっていく設計の台座。普段プラモデルとして作らないモチーフというのも相まって「これってどうなるんだ?」と想像がとまりません。ランナーを眺めているだけでも楽しい! パーツ数が多くなくとも組みごたえはじゅうぶんです。

そして徹底的な彫刻はずっと見ていられますね。この獅噛(しかみ・ベルトのバックルに当たる場所)なんてキレッキレですよ。イカす!手のひらサイズだからこそ、実物よりも細部をとらえることができます(そして意匠の意味を学べます)。
最後にこの絶妙なプラスチックの色! この美しさに痺れました! 少しラメが入っていて金属みを感じる深緑色。深みのある青銅の像のようです。仏像は本来木彫りが多いので「リアルな成形色」とは言えないのですが、そんなことよりこの色で曲面や細かな造形が際立って見えることに感動します。なんて綺麗な……この色はこのまま残しておきたい! とすぐに感じました。

四天王像は建立当時、極彩色で塗装されているものが多かったようですが、現存しているものは色褪せているものがほとんどです(一部金箔が残っているなどはありますが)。作られた当時の色を再現する。いかにも「仏像」らしく仕上げる。さまざまな塗装のアプローチが出来るモチーフのキットではありますが、ぼくはあえて塗らない! そのままがいい! こんな新しい気持ちと出会えました。
自分の決めたゴールまでいけばみんなエラい。新しい気持ちと共に、プラモデルの良さを改めて感じたキットでした。