
パットン戦車と呼ばれた戦車は数多く存在します。朝鮮戦争で登場したM46シリーズ、西側諸国へ広く輸出されたM47シリーズ(というより、映画『バルジ大作戦』でドイツ戦車役を演じた車両と言ったほうがピンとくるかもしれません)、そしてベトナム戦争を戦い抜いた完成形ともいえるM48シリーズ。連番で進化していくこれらが「パットン戦車」です。

当時のアメリカは、冷戦の向こう側にいるソ連の新型戦車へ対抗するため、改良を重ねながら次々と新しいパットンを送り出しました。そのため、これらはしばしば”ストップギャップ”――つまり「その場しのぎ」の戦車と呼ばれてきました。

M60もまた、その流れの中で生まれたアップグレード版です。従来のパットン戦車は舟形の車体が特徴でしたが、M60では車体前面が角ばったデザインへ変更され、ここが大きな見分けどころになります。一方で車体側面は従来の丸みを残しており、新旧のデザインが同居したちょっと不思議な姿になっています。

さらにM60も改良が続き、A1以降では砲塔が大きく力強い形状へ変化します。このあたりの慌ただしい変化こそ、パットン戦車らしさなのかもしれません。こうした進化を経て、M60以降は”スーパーパットン”とも呼ばれるようになります。

そして時代はさらに進み、リアクティブアーマーという新しい装甲が登場します。敵弾が命中すると装甲自体が爆発して威力を弱める装備で、戦車が好きなら車体に小さなお弁当箱のようなブロックが並んでいる姿を見たことがあるでしょう。あの装備が普及したことで、M60A1にもリアクティブアーマーが装着されるようになりました。

このタミヤのキットが面白いのは、その進化の歴史をキット自身も歩んでいるところです。もともとはモータライズ仕様として発売されたため、車体内部には電池ボックスのモールドが残っています。しかし砲塔やリアクティブアーマーなど外装は何度もアップデートされ、当時最新のM60A1へと進化しました。まるで実車の歩みをそのままなぞるようなプラモデルなのです。

車両も現役を退いて久しく、このキットも湾岸戦争当時の商品なので決して新しいものではありません。それでも「やっぱりタミヤだな」と思わせるのが、砲塔後部のバスケットの組み立てです。L字の金具でループ状パーツを受けるだけでなく、端にはE字型の治具を用意し、接着時に間隔がズレないよう工夫されています。こういう組み立てやすさへの気配りは、今も昔も変わりません。

増加装甲も実車同様の金具を表現しながら、大きなダボによって位置決めは非常に簡単。こちらは砲塔前面に取り付けるリアクティブアーマーですが、実車ではなかなか複雑な取り付け方法になっています。

それをタミヤは、大きなブロック単位で気持ちよく組める構成へ整理しています。側面の装甲も台座との関係がわかりやすくまとめられていて、ゴツい見た目とは裏腹に組み立てはとても軽快。気軽に楽しめるところがうれしいですね。

さらに湾岸戦争らしい、ラフな雰囲気の海兵隊戦車兵も付属。胸の拳銃がなければ、そのまま週末キャンプを楽しんでいそうな空気感で、なんとも味があります。

車長と並べるとさらに楽しい。ハッチから身を乗り出す姿も含めて、今にも二人の会話が聞こえてきそうです。眉間にシワを寄せ、ゴーグル(あるいはサングラス)を掛けた戦車兵と、穏やかな表情の車長。この対比も実にいい雰囲気です。

完成すると、とにかく大きい。車高も高く、105mm砲が小さく見えてしまうほどの迫力があります。低くコンパクトなシルエットを追求したソ連戦車とは、思想そのものが対照的です。

湾岸戦争ではM1エイブラムスやM2ブラッドレーといった最新兵器が脚光を浴び、その圧倒的な戦果が注目されました。しかし、その陰でM60A1もしっかりと戦列に加わり、戦力の底支えを担っていたのです。

結果としてM60A1は、苦しい改良を重ねながら歩んできたパットン戦車の最終到達点として、美しい姿のまま第一線を退きました。そんな最後の姿を、このキットはたっぷり味わわせてくれます。リアクティブアーマーが並び、荷物が積まれ、大きな砲塔は見どころでいっぱい。「ストップギャップ」と呼ばれ続けた戦車とは思えないほど、堂々とした存在感があります。だからこそ、このアメリカ戦車 M60A1 リアクティブアーマーは、パットン戦車が最後にたどり着いた”有終の美”を存分に楽しめるプラモデルなのです。