
私がミニ四駆やガンプラを経てスケールモデルを始めた1999年頃、模型誌各誌はタミヤのミリタリーミニチュア(MM)シリーズ30周年特集で盛り上がっていました。その中心にいたのが30周年記念キットであるシリーズNo.230の「40トン戦車運搬車 ドラゴンワゴン」でした。当時MMで最大・最高額だったこのキットの登場から、1989年のティーガーIリメイクから始まった第二次MMブームを盛り上げる機運がどれだけ大きかったのかが感じられます。

とはいえその時は買いませんでした。トラックや牽引車といった裏方車両よりも戦車や装甲車のような正面装備の方に興味があったからです。しかし、MMシリーズの60周年も見えてきた今、遅ればせながら支援車両が放つ「戦場で働く車」としてのメカニカルな魅力に興味が湧いてきました。そこで、ドラゴンワゴンのトラクター部分を単体化したこの「M26装甲戦車回収車」を買ってきたのです。
そして箱を開けて驚きました。そこにはあの日の夏休みが詰まっていたのです。

大きな箱には、ぎっしり部品の付いたランナーと、その傍らの内帯と中仕切りで区切られた空間に、猫の頭ほどもある一体成型の装甲キャビン(運転席)と細かなパーツを収めた小さな化粧箱が収められています。このパッケージングを見て思い出したのは子供のころの夏休みに買ってもらった豪華なラジコンやプラモ、あるいはお中元の金文字が印刷された高級ハムや由来が書かれた冊子付きの和菓子といった贈答品でした。

これは薄いプラで成形された装甲キャビンの保護やパーツ紛失防止という実際的な目的が主でしょうが、それでもこの特別なプレミアム感は、蝉の大合唱が聞こえる蒸し暑い日に箱を開けたことも加わり、あの日のワクワクして箱を開けた夏休みの記憶を強く呼び起こします。

その化粧箱の中身もいつもの戦車模型とは一線を画します。タイヤやクリアパーツのほか、金属製の車軸、メッキパーツ、真鍮パイプといったMMシリーズでは珍しい素材が並びます。ナイロン紐がカット済みではなく糸巻き台紙に巻かれたまま入っているのも「いつもとは違うぞ」と気分を盛り上げます。

製作もウインチのリールにそのナイロン紐を2.7m(!)に切って巻いたり、マフラーを作るために筒状に曲げたエッチングパーツをエナメル線で縛ったりと、普段とは違う工程が求められます。すべてがインジェクションプラスチックパーツで作られた定型的な模型製作よりも夏休みの工作課題に取り組んでいるような気分になります。
とはいえ、そこはタミヤ製キット。怯む必要はありません。この夏、あの日の夏休みに戻った気分とともにゆっくり味わいましょう。