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夢のアオシマ新作バイクプラモデル、CB750 FOURに込められたメッセージ。

 この模型に足りないことがあるとしたら、エンジンに火が入らないことだけだ。50年以上も前のプラモデルなのに、いまでもそんな賛辞を唱える人すらいるのがタミヤの「1/6 Honda DREAM CB750 FOUR」である。K0(ケーゼロ)と呼ばれる1969年モデルが、まさに実車を組み立てるような圧倒的な実感を持って迫ってくる。ひとつひとつのパーツが大きく、しかも緻密で、まさに史上最高級のバイク模型のひとつと言っていい(名前は似ているが、同社の「CB750F」とは全く違う製品なのであしからず)。

 同じモチーフが半分の大きさになって、体感で2倍の解像度を手に入れて、なんとアオシマから新発売された。アオシマの開発マンが実車のことを調べていないわけがないように、タミヤの超傑作キットのことだって知らないはずはない。だから、このプラモデルはそのへんの1/12バイクモデルとはワケが違う。ある程度プラモデルを長く嗜んでいる人ならタミヤ製品CB750の驚異を自ら体感したか、あるいは甘美な思い出を誰かの言葉として聞いたことがあるはずだから、それと同じか、あるいはさらに圧倒的な体験を提供することが、このプラモデルに込められた役割である。

 タンクやカバーはタミヤからも限定販売されたことのあるキャンディブルー(すこし黄色みがかった絶妙な色調の青は、’60年代の塗料の質まで伝えてくれるようだ)。ツヤ加減もすばらしく、塗ってしまうのがもったいないほど。こういう美味しいプラスチックの色が「このまま組んでもいいんですよ」と僕らにささやきかける。

 ホイールは前後それぞれ4枚重ねの構成でスポークの緊張感が重層的に表現される。フツウのプラモデル用接着剤でメッキパーツを接着するのは難しいが、いまならメッキ素材にも有効な接着剤がいくつかある。説明書の言うとおりに接着面のメッキを丁寧に剥がしてから貼ってもいいし、メッキをすべて落としてから組み立て、あまたあるメッキ調の塗料でその輝きを復活させてもいい。50年前と違って、プラモデルを楽しく、快適に組み上げるためのツールやマテリアルは信じられないほど豊富で、高性能だ。当時タミヤのCB750に挑んで挫折した人も、きっと組み上げられる。

 ウインカーやストップランプがそれぞれ色付きのクリアー素材になっているのは感涙モノ(ツヤをキープしながら均一な発色を目指して塗るのはなかなか難しい)。さらにヘッドランプの横にはバッテリーが透明パーツで用意されている。そのサイズゆえにチェーンこそ組み立て可動式ではないが、このプラモデルを通してCB750 FOURを知った者にとっては突如現れた超解像度のキットに見えるだろうし、かつてタミヤのキットに憧れ(あるいは感動した)者にとっては「なるほど、こんなハイデフなプラモデルが1/12でも味わえる時代が来たのか!」という感慨を与えてくれる、凄まじいアイテムだ。

 大きく、究極的なメカニズムを表したタミヤのCBナナハンと、サイズの小ささに負けないだけの情報量を詰め込んだアオシマのCBナナハン。まるでPGガンダムとRGガンダムのような関係にある両者の間をつなぐ糸をイメージしながら組み立てれば、なぜこのプラモデルがいまここにあるのかがより明瞭に見えるはずだ。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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