
全日本模型ホビーショーのハセガワブースで自信満々にくるくる回る新アイテム、ホンダのXLRバハ。「これ、無塗装状態で組み上げてデカール貼っただけなんですよ」と言われたら俄然組みたくなります。プラモデルは時として、誰かが作ったものと同じものができるから嬉しいんだぜ。
発売されてワクワクしながらパッケージを開けると黒、白、グレー、赤、クロームメッキ、透明の6色のパーツがお出迎え。基本的にバイク模型は実物にかなり近いパーツ分割になるため、色分けされているプラモデルを組むとだいぶ見栄えがします。乱暴に言うと、だいぶガンプラとかに近い存在なのだ(接着剤を使ったりはするけど)。

ハセガワがめっちゃこだわっているのは、実物が銀のところは高確率でグレーのパーツにするっちゅうことなんですよね。タミヤならシルバーにするところも、「アルミなのかステンレスなのかマグネシウムなのかチタンなのか、自分で質感に応じたシルバーを塗りなさい!」と言わんばかりのソリッドなグレー。ここが銀色のプラスチックになっていたら「塗らなくてもカッコいいレベル」がさらにUPすると思いますが、ここはメーカーの個性ということでひとつ。

んで、組み立て始めるとこれがめちゃくちゃに細かい。途中で投げ出しそうになるくらい小さなパーツを微妙なノリシロでくっつけていく工程が続き「これ、もしかしてオレ向きじゃないかも……」としょげそうになるのですが、なんせ精度がとても高いので少しずつでも組み続ければ着実にカタチができあがっていきます。この感覚、ずっと考えていたんですがようやくわかりました。ハセガワのバイク模型って「実車に乗っていたかつてのヤングなライダー」に向けて作られているということに気づいたのです。

バハの姿は知っていても、「そんな米粒みたいなパーツ、省略されていたって別によくない?」と感じてしまう私は、あくまで図鑑的にこのバイクを見たことがあるだけ。反面、人気のあるバイクにはたくさんのオーナーがいて、それぞれに苦楽をともにした思い出があります。オフロード車ともなれば、乗るたびに愛機を眺め回し、調子が悪ければ整備し、汚れれば磨き上げ、手を動かしてカスタムや修理にいそしんだはずです。
そんなかつてのバハのオーナーにとって、このプラモデルはおそらく「まるで実車を組んでいるような精密さ」に映るはずです。そうそうそう、確かにフレームの裏側はこうなってたな!この部品を交換すると調子が戻るんだよな……!という、戦車模型や飛行機模型とはちょっと違う喜び。なるほど。共感はできないけど、理解はできるぜ。

私がこれまで組んできた標準的なバイク模型のスピード感に対して3倍くらいのじっくり加減でカタチになっていくバハは、いつまで経ってもモノトーンの世界。白、グレー、黒という無彩色の緻密な塊なのですが、最終盤に訪れる赤いシートのパーツを乗せる瞬間は筆舌に尽くしがたいカタルシスが訪れます。

このシートを乗せるときこそ、バハがバハらしくなる瞬間。赤くてペロンとしたカタチも相まって、まさにキットの大トロ(いや、めっちゃ旨い赤身か)といった様相です。キット全体を振り返ると、パーツ数は多く、配管やワイヤリングの類も超緻密に再現されているため、腰を据えて挑むべき内容になっています。とは言え、1/12スケールのオフロード車のプラモデルが新規開発されるというのは超レア事象。令和の精度と細密さで迫るあの頃のバイクは、きっと貴方の記憶の扉をこじ開けてくれるはずです。