
タミヤのミリタリーミニチュアシリーズ(以下MM)最新作として発売された「ドイツ 5cm対戦車砲 Pak38」。でっかい戦車と比べると少々地味に見える対戦車砲のプラモデルですが、MMの伝統的セットアップと最新キットのシャープさが同時に味わえるアイテムです。

戦車の主役っぽさと比べると、どうしてもサイドメニュー感の漂う対戦車砲のプラモ。しかし戦車模型といえばモーターで走るのが常識だった時代にシリーズが始まったMMでは、かなり初期からキット化されていた題材でもあります。砲兵のフィギュアとも絡めやすく、なにより戦車と違って走らなくても違和感のない対戦車砲は、「動かないミリタリープラモ」としてスタートしたMMの題材としてぴったりだったんですね。

実質バイクなんです。本当に。というのも、大砲のプラモはメカニカルな面白さがてんこ盛り。言ってしまえば「箱」である戦車は、表面のディテールに凝ってくれれば裏側については割とどうなっていてもOKな題材です(インテリア再現とかしない限りは)。しかし対戦車砲には表も裏もなく、大砲の横にはそれを稼働させるためのメカがびっしりくっついており、外観と動作がガッチリと噛み合っています。外側と内側がなく機構が剥き出しで動く機械という点でいえば、大砲のプラモはどちらかといえばバイクのプラモに近いところがあるのかもしれません。


というわけでランナーを見てみると、メカっぽくて細かいパーツが大量にくっついております。一目見て「あ、この部品はあそこのアレだな」となるようなわかりやすいパーツが少なく、完成形が読めないミステリアスさが大砲プラモの魅力ですね。砲弾の空薬莢には弾が飛んでいったあとの穴がちゃんと開いていたり、砲架のリベットがキレキレだったりと、細かく見ても見どころが多いです。

興味深いのが、Pak38の兄貴分と言える7.5㎝砲、いわゆるPak40のタミヤ製キットと共通点が見られる点。リング状のパーツを中央の車輪パーツに貼り付ける主輪の構造や、砲架の組み立てプロセスなどはなかなか近いところがあります。どちらも構造や形状がよく似た対戦車砲ゆえに設計が似てくるんでしょうが、タミヤの設計は50年前からシャープだったんだなあと思わされるものがあります。



とはいえさすがに最新キット、ややこしい形状の対戦車砲をミスなく組み立てるための工夫が至る所に盛り込まれています。部品を取り付ける箇所にはスタンプのような刻印がモールドされており、言われた通りにパーツを取り付けることでかっちりと部品を取り付けることができます。パーツを接着するための軸も大きめに作られており、強度面にも配慮が。どっちがどっちだかわからなくなりそうな左右の砲脚には「L」「R」のタグがついており、細かい気遣いだなあ……と感心します。


ちっちゃくて緻密。これぞ大砲のプラモ! 後ろから見た時の情報量の多さもたまりません。

いかにもドイツ人的なアイテムがこの補助輪。砲脚を閉じたところにこれを取り付けて、3輪にして運ぶのです。完成してみれば、小ぶりなサイズにギッチギチにメカが詰まった大砲の姿が。ペラペラに薄く見える二重の砲盾のエッジがたまりません。また砲の仰角・俯角や左右旋回、砲脚の開閉など動かせる部分も多く、特に仰角・俯角の調整についてはクリック感のある構造になっています。このクリックによって、砲が重さに負けてヘタることなくシャキッとした角度をキープしてくれます。射撃姿勢に加え、牽引中の姿勢で組み立てることも可能ですので、組み立て途中にどちらか選択して組んでください。

思えばMMで大砲プラモが発売されるのは、1975年のPak40以来50年ぶり。「対戦車砲本体+砲兵のフィギュア」というMMの伝統的パッケージの堂々復活は素直にめでたい。3.7㎝砲、7.5㎝砲の間である5㎝砲の枠がビシッと埋まったのも気持ちのいいところ。往年のMMらしさと最新キットの精度が味わえる、温故で知新なナイスプラモと言えましょう。