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もっと強力な対戦車砲をくれ~!!装甲と火力のシーソーゲームを「タミヤの大砲のプラモ」が教えてくれる!!!

▲大砲のプラモ、作ったことありますか?

 戦車など各種車両やフィギュアに比べると、どうしてもちょっと地味な印象になりがちなのが、大砲のプラモ。しかしタミヤMMではシリーズ第五弾の製品として「イギリス6ポンド対戦車砲」をラインナップしており、「フィギュアと組み合わせて情景遊びをする際の準主役アイテム」として大砲プラモを捉えていた様子。今回紹介する「ドイツ75㎜対戦車砲」も、主役を張れる密度感と完成度が持ち味。脂が乗りまくった初期MM黄金期の味わいを、今でも手軽に楽しめます。

▲「70年代MMパッケージの真骨頂!」みたいなボックスアート。カッケ~
▲取扱説明書の解説にも栄養があるので、全部読もう

 75㎜対戦車砲、よりドイツ風に書くと7.5㎝ PaK 40は、大戦中盤から後半にかけて、ドイツ軍で広く使われた対戦車砲です。この7.5㎝砲までにドイツ軍が使っていた対戦車砲は、戦前に開発された口径3.7㎝のもの、もしくは大戦序盤に量産された口径5㎝のものだったのですが、これらの対戦車砲は独ソ戦開始後にぶつかったT-34やKV-1などの敵戦車に対してロクに歯が立ちませんでした。

 ということで、「もっと強力な対戦車砲をくれ~」という前線からの声に応えて製造されたのが、この7.5㎝対戦車砲です。そういう経緯で開発された対戦車砲だったのでそれなりに威力があり、大戦中盤以降にドイツ軍が多用した対戦車自走砲に搭載されたり、ちょっと変わったところだと航空機に取り付けられて対地攻撃に使われたこともあります。
 口径が大きくなるにつれて大砲自体も大型化しており、7.5㎝砲になると砲身長も3m超え。最初の3.7㎝対戦車砲(こちらもタミヤからイカしたキットが発売されております)と比べるとマジで倍以上のサイズアップとなっており、「装甲と火力のシーソーゲームってマジヤベ~んだな」と思わされます。また、砲自体は爆速で巨大化しているのに全体の高さは3.7㎝砲とそれほど変わっておらず、対戦車砲というのはとにかく「低く構えて敵を待ち伏せする」という兵器なのだなというのがよくわかります。

▲この成型色を見よ!

 というわけでキットの中身はこんな感じ。大砲部分でランナー2枚、フィギュア部分で1枚という構成です。しかし、本当にタミヤのジャーマングレーとフィールドグレーの成型色はカッコいいですね。ランナーからドイツ的合理精神がモクモクと立ち上っております。このキットの発売は1975年ですが、45年以上昔のキットとは思えないキレキレ具合。

▲砲身は左右分割!!! 形状はシャープ
▲この二重構造の防楯のキレ!
▲砲兵アニキの皆さん。モールドから漂う、実家のような安心感……

 近代的な大砲は砲自体の閉鎖機(大砲の後端に付いている、砲弾を突っ込む穴に栓をするメカ)に加え、砲にくっついてる駐退複座機(発射時にガツンと砲身を後退させて反動を吸収し、発車後は後退した砲を元の位置に戻すメカ)も付いており、さらに砲を上下左右に動かす装置や、砲を乗っけるマウントや、地面に砲を固定するための脚もくっついています。このへんのゴチャゴチャ感が大砲のプラモの美味しいところなんですが、パーツの雰囲気がダルいとちっとも美味しそうに見えません。その点タミヤの7.5㎝砲は最後までチョコたっぷり、昨日発売されたプラモデルのようなシャープさと程よく簡潔な組み心地で、「ウォー! メカだ!」といううれしみをドロップしてくれます。

▲割とすぐ完成! 70年代のキットなんでパーツが適度に少なくて嬉しい
▲この密度感が大砲プラモのキモなのだ

▲砲手アニキはちゃんと片目をつむって照準器を見ている、というこのわかりやすさ! 好き!

▲人形との絡みでさらに輝くのが大砲のプラモなのだ

 完成するとこの感じ。この防楯のペラペラ感、そして防楯の表裏のメカっぽさのメリハリ……。今見ても惚れ惚れするようなシャープさです。そして砲兵のおじさん3人にも注目。なんせ重たい大砲の弾を上げ下げしたりする仕事なので、全員腕まくり。そして防楯の影に隠れられるよう、身をかがめております。この辺の演出の劇画的わかりやすさが、まさに70年代MMの真骨頂と言えましょう。

▲この大砲はいろんな車両に搭載されているので、7.5㎝砲縛りでプラモ買うのも面白いっすよ

 というわけで、タミヤの「ドイツ75㎜対戦車砲」は、手軽に大砲のメカっぽさと70年代MMの勢いを手軽に味わえる名作プラモとなっております。なんせ大砲には細かい部品も多いので、大型のものだと組み立てもそれなりに大変なんですが、このサイズならほぼノンストレス。ぜひ一度試してみていただきたいキットです。

しげるのプロフィール

しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

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