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過剰な余剰はアオシマ製ヤン車モデル黄金時代の手触り/『シャコタン☆ブギ』ジュンちゃんのハコスカ」に痺れる!

 アオシマの『シャコタン☆ブギ』シリーズ、ジュンちゃんのハコスカである。箱を開けた瞬間、目がバグったのかと思った。青いパーツと透明のパーツがダブって見える。そんなわけがあるか。ここにあるのはシート、オーバーフェンダー、ロールバー、フロントマスクのパーツだと思われるが、助けてくれ、どういうことなんだ。

 まったく同じ形状のランナーが透明と青で2枚入っているのである。もちろんシートやロールバーやオーバーフェンダーが透明である必要はない。おそらく透明であってほしかったのはフロントマスクの両端にある角目のヘッドライトだろう。たしかにヘッドライトは透明であってほしく、シートなどは透明であってほしくない。なんならヘッドライト以外のパーツは不要部品である。そんならフロントマスクのパーツだけを独立させて透明パーツにすればいいだけの話ではないのか……と思う。

 しかし、このキットの起源はおそらく’80年代初頭に発売されたもので、かなり古い。カスタムカーのプラモデルって追加費用をどれだけ抑えていろいろなバリエーションを出すかという経済的な論理があるはずで、つまり「透明パーツを独立させて作るよりも青くあってほしいパーツと一緒に彫刻して色違いで2枚売ったほうが安く上がる」という考えがあったのかもしれない(なんなら昔発売されていた「角目」は他のパーツと同じ色で「銀に塗って下さい」という指示だったのかも)。

 もっと見ていくと「戦車模型なのか!?」とツッコみたくなるくらいホイールが大量に入っている。シルバーメッキのが実際に装着するもので、黒いのはノーマル仕様の名残、青いのは真ん中にあるドアミラーだけを使うためのランナー……という贅沢な仕様である。そこからは「とにかくたくさんカスタムパーツを彫刻してひとつの車種をベースにたくさんのバリエーションキットを発売し、カスタムパーツの順列組み合わせでさらなるバリエーションを作る」という、カスタムカーや改造車の時代を謳歌したアオシマ的カーモデルの作法が見えてくる。

 先日いっしょに酒を飲んだアニキは「アオシマ製のヤン車にはたくさん遊んでもらったな。説明書にアミ掛け(=不要パーツ)が多ければ多いほど嬉しかったのよ」と語っていた。不要パーツは廃棄されるからSDGsに反する……のではなく、余剰のカスタムパーツを溜めておき、他社のキットと合体して「オレのマシン」を作る。これはつまり、カスタムカーのプラモデルがじゃんじゃん開発され、そこからパーツの組み合わせを選び出し、ある程度似ていれば「◯◯仕様」と名前を付けて販売できという、ガバガバ……もとい、おおらかな時代の遊びだ。

 組んでいてビビったのがフェンダーアーチの処理。オーバーフェンダーを取り付けようとしてボディをひっくり返したら、シャコタンにするためにフェンダーアーチを大きく切り取る……という改造車プラモの必須工作が出荷前にあらかじめ施されている。おそらく工場でノーマルボディに何かしらの治具を当て、電動工具でガバーっと削ったのだろう。断面が白化していて、フチがちょっとだけめくれているのは「オレではない誰かがヤスリを掛けた跡」だ。見知らぬ誰かとの共同作業、めっちゃおもしろい。

 このキット、正直言って『シャコタン☆ブギ』に登場するジュンちゃんのハコスカとそっくり同じかと言うと、かなり違う。オバフェンはこんなポン付けの細いものではなくもっと張り出して滑らかな形状だし、フロントに外付けされたオイルクーラーの幅ももっと小さい。細かいことを言い出せばキリがないが、ハコスカをローダウンして当時のやんちゃな改造車に仕立てる……という遊びをこんなに手軽に味わえるのは80年のアオシマ製キットならでは。

 シャコタン☆ブギのシリーズはかなり開発年代の古い旧車のプラモデルをベースにどれも個性的なカスタムを楽しめるキットばかり。しかし、シンプルな構成にゴージャスな余剰パーツの嵐、そしてフェンダーアーチ加工済みのカラードボディなどなど、ジュンちゃんのハコスカはシリーズのなかでも突出した特徴を持つアイテムだ。用意されたパーツを自分なりに組み合わせ、自分だけのハコスカを作るのも楽しい。おおらかな時代のやんちゃなパーツたちと戯れるビルドの喜びを、ぜひあなたも味わってほしい。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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