

2020年代におけるハセガワの主力製品ラインのひとつ、2ストローク黄金期/レーサーレプリカブーム期を象徴するバイクモデルにヤマハのTZR250 3MAが最新アイテムとして加わりました。
バイクって実際に買って乗って楽しむマシンであると同時に、実物を知る世代にとって「その時代のカルチャーを追体験するためのモチーフ」としてあまりにも当時性が強い。正直に言いますと、オレはTZR250 3MAというマシンのことを何も知らない。知らないので組みながらずーっと勉強していました。そしたら、バイクという乗り物がだいぶおもしろく思えてきたのです。
プラモデルの説明書を読んでも、実車の記事を読んでも、とにかくこのバイクの最大の特徴は「後方排気」だと言います。なんなら3MAをもじった「サンマ」というあだ名よりも「コーホーハイキ」呼んだほうが通りが良かった……と回顧する人もいるくらい。いや待てよ、バイクってそもそもなんで後方から排気しないんだ。飛行機だって前から空気吸ってエンジンで燃料燃やして後ろから捨てるじゃん。そっちのほうが簡単そうじゃん。

上の写真はタミヤのGSX-RR。オレもいままでバイクのプラモをそれなりにたくさん組んできましたけど、確かに言われてみるとバイクのエンジンって後ろから空気を吸って前から排気するものばかり。排気管が前から出てきてぐるっとエンジンの下を回り込んで後ろへ……。メカとしてこっちのほうがカッコいいけど、なんでそうなってんのか考えたことなんて一度もありませんでした。

往時を知るアニキに聞けば、レーサーそっくりの公道仕様車(=レーサーレプリカ)が流行った時代はレーサーのスタイリングはもちろん、技術的な新規性をいかに市販の量産車に移植・継承するかがユーザーの心を刺激したのだと言います。「TZR250の特徴である前方吸気/後方排気は、同時開発されたヤマハ TZ250 3AKという市販レーサーと同じ技術を共有しているのだ!」という事実が多くのライダーを興奮させ、さらにはライバルメーカーのファンたちを猛烈に嫉妬させたんですよ……とか言われるとだんだん組みたくなってきますねこのプラモを。

ハセガワのバイクプラモは実物再現にかなり力を入れていてパーツ分割がめちゃくちゃ激しい……という印象があったのですが、この3MAはそこまでピーキーな組み味とせず、(鬼のような配管の工作を除けば)カタチにしやすいキットだと感じます。シルバー塗装に指定される部分のほとんどがグレーのプラスチックだったりしますが、これは塗装による質感表現にこだわりたいユーザーを見越してのことでしょう。

エンジン組んでフレーム組んでスイングアーム組んでネジ止めして……という流れはいつものバイク模型と同じ。でもここからが「前後逆」の美味しいところ。エンジンの後ろからものすごくセクシーなカタチのチャンバーがズドーンと突き出してそのまま後ろに伸びていくのをビジュアルとしてチョクに表現したかったので吸気〜排気までの経路は全部金色で塗りました。かっこよすぎ。そんでもってこれにカウルくっつけたらなんも見えなくなるのヤバすぎ。これにラジエーターとエアダクト付けたら完成でいいですよこの模型は。

作りながら当時の(そして現役の)3MAライダーの書いたお話をたくさん読みました。すると、「前から吸って後ろから吐き出すのが自然だし、エンジンが低いところにあれば重心が下がって良いでしょう?なんせレーサーと同じ構造だぜ!」というトキメキの裏で「でも太くて重いチャンバーが重心低下の効果を打ち消してるからあんまり曲がんないし、排熱でケツが熱いし、なにより管長が短くて低回転域のトルクが無くて、とにかくカットバしたときにだけ気持ちいい音が出る」という強烈なキャラクターで記憶に残る、良くも悪くもスペシャルなマシンであったことがわかってきます。
そもそもタンクカバーに収まったエアクリボックスからキャブに向かってラジエーターを避けながらぐにゃりと伸びる2本のダクトを眺めていると、素人目にも「うーん、これは本当に効率が良かったのだろうか」という気持ちにさせられます(レーサーのTZ250は用途がハッキリしているからキャブレターがむき出しなのだ)。

前後のタイヤとキャブレターとエンジンと変速機とラジエーターとライダーと排気管が全部一直線に並ぶことが宿命付けられたバイクという乗り物。そこにはある種の”最適解”があり、冷たくてきれいな空気を安定してエンジンに取り込む方法、長い管を通してあらゆる回転域でエンジンの出力を最大限発揮させる方法、それらを低重心かつコンパクトに収めるパッケージングというものがあるのだ……ということに気づくと、これまで組んできたバイク模型の解像度がグッと上がった気がします。
そして、この3MAというマシンの持つ魅力と欠点を組み立てながら感じられるのは、プラモデルというメディアの素敵な性質と言えましょう。世代を超えて伝えられる機会を経たレーサーレプリカ時代の狂乱を、みなさんもぜひ体感してください。