
タミヤのビラーゴと出会い、なるほどジャパニーズアメリカンの系譜ね……と模型店のバイクコーナーを見渡すと、アオシマのスティードがどっしりとした目つきでこちらを見てくる。大学の後輩が乗ってたな、まあカタチはざっくり分かるぞ、くらいの解像度しかないのでこのバイクがアメリカンっぽいこと以外はよくわかっていない。よくわかっていないときというのは大チャンスで、「分かりしろ」がデカい。まずこのスティード、VLSというメーカーカスタムに近いモデルでフロントフォークがやたら複雑な形をしている。
バイクのフロントフォークというのはトップブリッジからシリンダーがズゴーンと2本生えているのが定番だと思っていたが、確かにハーレー・ダビッドソンとかでごっついバネと4本の棒がギコギコ動く構造のサスを見たことがある。これをスプリンガーフォークといい、構造的には昔のスーパーカブもこの方式を取っていた。たしかに。グーバイクのコラムを読むと「スプリンガーフォークは見た目だけでデメリットばっかりです」みたいな非常に主観的なまとめになっているのだが、実際に登場時にVLSを試乗したジャーナリストなどは「Hondaが見た目だけに終わるわけなくて、ちゃんとまともに機能して乗り味も極上だった」と回顧していたりして興味深い(いまさら終売したバイクをヨイショする必要はないもんな)。

ビラーゴを起点に教科書的な知識を得ていくと「アメリカンと言えば空冷Vツインですよ」となるし、このスティードにもフィンの生えたシリンダーブロックのパーツが並んでいる。しかしこれ水冷エンジンなんだって。ほんとだラジエーターのパーツくっついてるわ。だからエンジンに刻まれたフィンはあくまでアメリカンな気分を盛り上げるための意匠であって、スティードというのはつまりアメリカンタイプのオートバイの模型みたいな存在だったのだなぁ、ということをいまさら知る。

表向き「鼓動感溢れる走り味と、ゆったりと快適な乗り心地が味わえる」とコンセプトを定めてはいるものの、カスタムしまくられることを前提としたバイクであり、当のHondaもカスタムモデルを鬼のようにラインナップしていた。アオシマはそれらを連綿とプラモデルにし、必要なパーツの順列組み合わせで年式やタイプの違いを追いかけてきた。このVLSはスプリンガーフォークのパーツが付属していることが最大の特徴ではあるのだけど、まあまあな量の余剰パーツが出るのでアオシマ製のプラモデルらしく「俺カスタム」をしたい向きにもお得感がある。

ちょっと感動したのは燃料タンクの造形だ。アメリカンタイプのバイクをカスタムするなら低くて長いシルエットにしたいし、タンクのようなボコッとしたものはなるべく小さくしたい。しかし小さくしすぎると容量が少なくなってロングライドに向かない。そこで編み出されたのが「容量を変えずにシルエットだけ小さく見せるため、タンクとフレームの間にある溶接用のフランジ(餃子の耳みたいなもん)をなくしたデザインにする」という手法だ。バイクプラモのタンクと言えば縦or横で真っ二つにするが、フランジレス形状を再現するために真ん中でバカーっと割ってからナナメに配置しているのが愛おしい。ちょっとヒケが目立ちますけども……。

そしてスティードのスイングアームの形状と構造がどうなっていたのかをプラモデルで初めて知る。パイプフレームが三角形になっていて外側にサスペンションがない。なるほどこうすると後輪がリジッドに見える。しかしフレームの奥に一本のモノサスが隠されていて、この後ろ三角全体が動くことで緩衝機構を成しているのであった。ああなるほど、ハーレーにおける「ソフテイル(見た目はリジッド、しかしちゃんとサスペンションしますよ、というタイプ)」ってそういうことか!スティードを起点にハーレーを理解するの、逆だね。でもプラモデルで遊んでいるとそういうことがいっぱいあって楽しい。

スプリンガーフォークで組むかどうかはとりあえず置いといて、パーツリストを眺めているとフツウのフロントフォークも入っているし、全体の設計も実車同様にいろんなものを外したり取り替えたりするのに向いた構成だ。かつてスティードに乗っていたアナタも、あるいはスティードに憧れたことのあるアナタも、そしてスティードにはまったく興味なかったけどこの話を読んで「なにそれ」と思ったアナタも、いっしょに作りましょう。一時代を築いたHondaらしい妙なコダワリと、それを受け止めたたくさんのユーザーの姿が見えてきます。