
ヒコーキ模型を青空に掲げるだけでけっこうな満足がある。なんならランナーがついたままの未組立でも充分だ。時間帯や季節の日差しの具合でプラスチックがまとう雰囲気が違って見えるのは実機でも同じこと。なので未塗装で満足しているヒコーキ模型は多く、快晴のもとブンドドしながら「この翼で調子よく空を舞えるのかー」と航空工学の不思議と向きあったりする。そう、機会があって久しぶりにヒコーキ模型を手にしたのは立川市という飛行機の街へ往訪したから。

スペシャルホビーの1/72スケール『立川キ54 一式双発高等練習機乙型』は戦前、赤とんぼなど訓練機を主とするメーカーであった立川飛行機の双発訓練機。2021年発売の丙型に続き、先日発売されたこの乙型は銃手訓練にも対応した仕様で、実機もそうであったように機銃座ターレットを追加するキットだ。並列複座、無線機の補助席などの機内の様子から訓練を想像できて面白い。加えて言うなら、海外の模型メーカーがこの機体の模型化に力を入れていること自体がおもしろい。

戦闘機然としていない、キュートな飛行機がカタチになるクライマックス、この開閉選択式の乗降ドアにはなぜか盛り上がってしまった。ここにも人の気配を感じたからだろうか。人のミニチュアがなくとも椅子や扉の開閉など、人の動線がキットで再現されてることで初見の機械に対して実存が高まるからかもしれない。
で、扉を閉めておきたかったがどうにもハマらない。扉がビミョーに大きいのでヤスリで削り、整えてハメ込む必要があった。他にもそんなムズい状況があるキットではある。バチピタサクサク工作も気持ち良いが、ひと手間加えて成せる喜びもあるとも思う。気分と体調次第ではあるが。

パーツ同士の合いも主翼など大きなものとなると反りも大きいので接着剤で貼りながら、なおかつ手で押さえながら隙間なく合わせていく。そんな工作も『Mr.セメントスーパーパワー』であれば待ち時間もなく、スピーディーに貼り合わせていけるので気持ち良い。

ふたつの機銃座ターレットをつなぐことで空力対策としたハウジングなど、特徴的なキャノピーが美麗なクリアーパーツになっている。接着剤で汚したくないな… そんな時、『アロンアルフア光』を用いればヒコーキ模型のキャノピーを容易に汚さず貼り付けられるようになったのは革命でしかない。
プラモデルに限らず何かを切ったり貼ったり工作しようとすると「ちょっとムズいな」という状況は多々ある。その解決にツールとマテリアルが進化し続け、一般ユーザーが恩恵を得れるのがプラモデル界隈の驚くべきところ。延々とシーンが活発なのって、他のジャンルにはそうもない気がする。

友人を訪ねて立川市へ往訪したら飛行機産業の名残を多く感じとれた。戦前から続く(!)街の模型屋で、今はなき立川飛行機(現在は立飛グループにその血脈が受け継がれている)の話を伺えたのがきっかけとなった今回。調べていくうち立川飛行機の技術者の長谷川龍雄が戦後、トヨタ自動車の主要な車種をつくっていたことを知り驚いた。なんなら同社の自動車開発の礎を築いている。私が生まれ育った愛知の産業に、初めて訪れた西東京にルーツがあったりとか驚きでしかない。長谷川龍雄をプラモデルで追いかけるのも面白そうだな……。