

造形村から1/48スケールのF-4E(後期型)が発売されました。同社が1/48のF-4Jを発売したのは2016年のことですが、今回F-4Eのパッケージを開けて驚いたのが「8年前に店頭で見たプラモデルとはまったく別物になっている!」ということ。ファントムIIには鼻の短いタイプ(ショートノーズ)と鼻の長いタイプ(ロングノーズ)があって、F-4Jはショートノーズで今回のF-4Eはロングノーズなんだからそりゃ違うでしょ……という次元の話じゃありません。武装やタンクといった付属物を除くと、両者にはわずかに1枠しか共通するパーツがない……ということを私はまったく知りませんでした。
じつに5000機以上が生産され世界15カ国で運用された(うち3カ国が現役で運用中の)ジェット戦闘機、F-4ファントムII。2021年に航空自衛隊から姿を消したのと前後して、2020年発売のファインモールド製1/72モデル、2021年発売のタミヤ製1/48モデル、2022年発売のモンモデル製1/48モデル……と、国外内のメーカーから多数のプラモデルが発売されました。そんななか見落としてはならないのが造形村から2020年に発売された1/48のF-4E(前期型)です。

組みやすさ、パーツ精度、ディテールの緻密さ、実機の印象の捉え方、価格……。プラモデルにはいろんなパラメーターがあり、各社が同じモチーフを競うように製品化するのには、それぞれ「こっちのほうがもっとすごいぞ!」というポイントがあるから。造形村は実機を研究しながら、2016年のショートノーズ型発売の時点で「合わせ目が目立たないパーツ分割」や「塗り分けやすいパーツ分割」をファントムIIの模型としてはひと足先に取り入れていました。

造形村がショートノーズ型のファントムIIをバリエーション展開する延長線上にロングノーズ型のファントムIIが登場することは誰しもが予想したはずです。しかし、彼らはほとんどまるまる新規設計でロングノーズ型のキット化に挑みます。プラモデルとしての組み味はそのままに、より実機の印象に近いラインを追い求め、さらに飛行機の見せる多彩な「ポーズ」を再現できるようにパーツの端々に選択肢を盛り込みました。例えばエンジンノズルの閉じ開き、フラップの上げ下げ、スタビレーターの作動角度などなど……。

なによりも、スラリと伸びる鼻や後部に向かってスルリと下がっていく機体側面のボディラインなどはショートノーズのずんぐりむっくりな印象とは対称的なシェイプでまとめられています。びっしりとリベットラインが並ぶエンジンノズル後方の部分もスジ掘りと段差をうまく使い分け、実機の無骨な雰囲気をよく表しています。私が手にとって感じたのは、ロングノーズのファントムIIというキャラクターを「カタチの特徴」と「可動部の演技」によってユーザーに伝えようとする意欲でした。

キャノピーは分割されたパーツ(開状態でのディスプレイに適している)と一体のパーツ(閉じたラインがスムーズに繋がり、塗装や工作も楽ちん)の2種が付属。さらにF-4E(後期型)から新たにカット済みのマスキングシートが入っているので、窓枠部分もピシッと塗り分けられるよう配慮されています。これ以外にもエンジンノズル周りのテールパイプシールなど、塗って仕上げるときに嬉しい(複雑な段取りを考えなくて済む)パーツ分割が随所に見られます。

今回紹介しているF-4Eの後期型は主翼に可動式スラット、スタビレーターに前縁スロットが付いたタイプを装備。その他センサー類やアンテナ類といった細部のディテールで前期型との違いを再現したモデル。このへんはファントムIIマニアの嬉しいポイントかもしれませんが、やっぱりいちばんの違いは塗装の雰囲気でしょう。前期型では1969年(ベトナム戦争ど真ん中)の三色迷彩が指定されていたのに対し、後期型では1988年のファントム30周年を祝うグレー迷彩を再現できるデカールが付属。こちらはイタリアの名門カルトグラフ社製なので余白もないし発色もいいし貼りやすいしで文句なし!

造形村が挑んできた1/32スケールでの超絶内部再現とはまた違うアプローチが感じられる1/48スケールのファントムII。そして自らが挑んだショートノーズのF-4とふたたびまっさらな状態から向き合うことによって生まれたロングノーズらしい造形。パーツを見ているだけでもさまざまな発見があり、説明書を読んでいるだけでも新たに知ることがモリモリ湧いてきます。

プラモデルとしては最新のフォーマットを備え、安定的に流通している1/48スケールのロングノーズ型ファントムIIとしては有力な選択肢のひとつとなる造形村のF-4E。実際に組み上げていく過程でどんなことが起きるのか、その途上で見える景色はまた次回。気になる人はキットを手に入れて、その見どころをいっしょに味わってください。それじゃ、また。