

マリンジャンボが完成した。今年の静岡ホビーショー併催のモデラーズクラブ合同展示会にあわせて仕上げるという目的を達成できた。1/144スケール、全長約50センチ。大きいけれども部品の少ないシンプルなキットで、ただ組み立てるだけなら一晩。塗装に1日、デカールだって部分的に塗装でリカバリーしたりしながら、都合3日もあればなんとかなるだろうとタカを括っていたら、危うく間にあわないところだった。
プラモデルが予定通りに作り進められないなんてよくあることなのだけれども、今回のはちょっとヘビーだったね。苦労自慢じゃないけれど、ちょっとまるっと振り返らせてよ。
最初に翼を差し込んで着脱できるようにプラパイプで軸と受けを作った。新幹線で手荷物として運べるサイズの梱包にするためだ。大きいプラモは完成後に「どうやって運ぶの?」ってなると、とたんに展示会に作品を飾りに行くことが罰ゲームみたいな気分になるから……。ついでに飛行状態で支えるスタンドの軸を挿すための受けもプラパイプで用意して順調な作り出し。

合わせ目がなかなか消えない。大きいモナカ分割なので掴んだ際にたわむ力が加わることでピキッと割れてしまうっぽい……ないぶにもっと梁を入れておけばよかった。今回は結局「優しく掴もう」という対処法で決着。優しさで解決できることもある。このくらいのイレギュラーは想定の範囲内。

ヘビーな状況になったのはリミット3日前の朝。胴体を青く塗ってこのキットのメインディッシュであるデカール貼り作業に手を付けたときのこと。デカールがさっぱり台紙から浮いてこない。胴体どころか自分が真っ青になってしまった。30分待てども1時間待てども熱湯に漬けてみたりもしたけれどびくともしない。
このキットが発売されてから手を付けるまでの30年の間に、密封されていないホッチキス止めのビニール袋に入ったデカールは経年劣化によって二度と台紙から離れない状態になってしまっていたのだ。陽に干して黄ばみを抜いたりして、貼るのを楽しみにしてきたデカールは死んだ。海は死にますか?山は死にますか?風はどうですか?少なくともデカールは死にます。

「もう諦めちゃおうかな?」と頭に浮かぶものの、思いとどまって作業を続ける。はじめからお腹の白いところなんかはうまく貼れずに結局塗り分けてリカバリーするだろうと思っていたし、尾翼の「ANA」も手でマスキングでなんとかなる。楽しげな海の生き物たちのグラフィックをどう処理するのかは全く目処が立っていないのだけれど、手を止めて考えているヒマも無い。できるところを進めながら考える。できるところがあるうちはプラモって試合終了しないんですよ……結果的に負け試合になってしまうのだとしてもね。

お腹の黒い線は0.5ミリ幅のラインテープを使った。デカールほど薄くなく段差になるので「しょうがなく」選ぶやり方という意識でいたのだけれど、想像より具合がいい。マスキングや手描きでよれたりするよりずっとシャープな仕上がり。これからは積極的に使っていきたい選択肢の一つになった。 実はこの線、実際の本数よりいくらか間引いている。自分の技術では実際の数だけ左右を揃えてきれいに貼ることができなかったから。大丈夫、言わなきゃわからない。減らした本人だって何本少ないのか既に覚えていない。こういう「思い切った省略」みたいなのも「じっくり作れない」時にようやく実行できたりするんだな。

そうやって「できること」をやりながらなんとなく頭の隅の方で考えを転がしておくと、なんだかんだで解決策を思いつく。結局、付属のデカールをスキャンし、Illustratorでトレースして線画だけのデカールを自作した。 直接手描きに挑戦しようかとも思ったけれど、端から描き始めて「わはは、自分下手だなぁ」と重なっていく失敗を笑い飛ばしながらフィニッシュに持っていくにはメンタルが持たなそうと思ったからやめた。自分へのメンタルケアから逆算して作業を決めるのも大事なんだよ。時間がないときほどね。

そして出来上がった「線画だけのデカール」を一通り貼っていく。ちょっと不思議な見た目になる。塗装というよりまるでレイヤー構造を使ったデジタルお絵かきをしているようだ。

貼り付けた線画デカールの上から「ぬりえ」のように筆で色を乗せていく。自作デカールの透明なフィルムの上に塗るので下地が溶け出す心配がない。ぐんぐん色が乗っていく楽しい作業。タイムリミットが迫る中、ランナーズハイならぬモデラーズハイを感じたね。塗り上がったら自作した線画のデカールをもう1セット上から貼って輪郭線をくっきりさせる。デジタルとアナログを駆使してしまった。さすが21世紀。

仕上げにクリアーコートしたのは出発前日夜明け過ぎ。諦めないって大事だね。30年でデカールは駄目になっちゃったけど「なんとかする」ことができるようにもなった30年ともいえる。逃した魚(クジラだけど)をモノにしてやろうという気概がある。展示会に飾るんだと知人に知らせてしまった背水の陣。俺はマリンジャンボを展示するぞジョジョ〜!という勢いでなんとか完成を迎えることができた。

おそらく今回、間にあわなかったら捨てていたんじゃないかと思う。展示会に間に合わなかったコトが想起される特級呪物になってしまうから。クヨクヨすることに費やす時間ももったいない齢になってしまったし、そういう割り切りめいた覚悟も含めて「なんとかする」マインドといえるな。

近くで見るとアラが目立つ「それなり」の出来栄えなのだけど。それでも「お気に入り」の作品になったよね。プラモデルは大抵のことは「なんとかなる」ものだし、そもそも「なんとかしていく」遊びだったんだって思い出したよ。