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組み立ててこそわかるキットの魅力、造形村のF-4E後期型と対話する芳醇なひととき。

 計器やスイッチがみっちりと居並ぶコクピットは、飛行機模型において最大の見せ場のひとつです。とくに1/48スケールでこれだけの密度を味わえるファントムIIのプラモデルはそんなに多くありません。パーツの数は少し多めに感じられるけど、それぞれの位置関係はバッチリ決まり、組み付けに不安になるような箇所はありません。造形村の飛行機模型は緻密な表現ゆえに組むのがちょっと大変そう……という印象を持っている人にとってみれば、このF-4E後期型が持つ快適な組み味はちょっと驚くべきものであるはずです。

 全32ページにも及ぶ説明書には文字や図版がぎっしりと印刷されていて、「こんなにやることが多いの!?」とびっくりします。しかし冷静に読み込んでいくと、ひとつの工程をいくつもの角度で書かれたイラストや拡大図によって懇切丁寧に伝えているから図版や記号がめっちゃ多い……ということに気がつくはずです。また、コラム的に配置されたテキストは各部のパーツがどんな機能を持っているかを日本語と英語で説明したもの。

 全体を通じて説明書からはものすごい濃度の情報が洪水のように押し寄せて見えるけど、じつはファントムIIのプラモデルとしてはかなりコンサバな構成で、「めちゃくちゃ細分化したパーツを延々組み立てなきゃいけない!」というタイプのプラモデルでは決してありません。

 胴体は左右分割で、天面にある細長いくぼみにパネルラインの入った板をポンと落とし込む構成。これは現在販売されているファインモールドやタミヤのキットでも見られるアイディアですが、いち早くファントムIIのプラモデルに取り入れていたのが造形村のストロングポイントです。目立つ合わせ目はコクピット前方のごく短い部分と胴体後方下面にある程度で、工作がスムーズに終わるのが組み立てていて嬉しいポイント。

 ファントムIIのプラモデルにおいて最大の難所と言えるのがコクピット左右にある縦長のインテークです。古今東西どのプラモデルをとっても「インテークが胴体側面の張り出しにスムーズに繋がるかどうか(あるいは繋がりづらいのをどうやってカッコよく組み立てられるか)」がキモなのですが、造形村のF-4Eは仮組みやすり合わせといったお作法を経ずともビシッとキレイに収まってくれます。スプリッターベーンに開けられた無数の小さな穴や上下のルーバーもすごくシャープな造形で、視線の集まるコクピットに近い部分をキリリと引き締めてくれています。

 主翼前縁のスラットはF-4E後期型の特徴的な部分ゆえ、あえて前方にせり出した状態で組むよう設計されています。外翼はリンクが一体成型、内翼は繊細な形状のリンク〜フェアリングをひとつずつパーツ化した設計ですが、これも説明書の指示通りにポンポンと貼っていけばキチンとズレずに(そして繊細な見た目とは裏腹にガッチリと!)組み上がります。

 胴体内部に収まるエンジンはインテークダクトからエクゾーストまで途切れることなく再現されていて、空気の通り道が胴体内部のどれだけの部分を占めているのかが否応なしに視覚化されています。

 フラップやエルロン、スタビレーターは取り付け角度が選択式になっていたり、前脚のアクチュエーターが地上姿勢のものと離着陸時に伸び切ったものから選べるようになっていたり、エンジン単体で展示する台がオマケパーツとして入っているなど、F-4Eのさまざまな姿態……ロボットモデルで言うならば「ポージング」を決めて組み立てられるのが本キットの大きな特徴です。

 プラモデルは地図のようなもの。ストイックに地形だけを表すものもあれば、建物の所有者をくわしく描き込んだもの、目的の場所に素早くたどり着けるよう情報を整理したものもあります。造形村のファントムIIを組んで驚いたのは「少し贅沢なパーツ分割と豊富な情報を盛り込んだ説明書」というのが決して辛く険しい道のりではなかったこと。たまに立ち止まって行き先を選び、そしていま自分が立っているところにどんな由緒があるのかを教えてくれるようなガイドを片手に、「ロングノーズのファントムII」という親しみ深い土地を改めて訪れる楽しさを教えてくれたように思います。多くのメーカーが挑んできたモチーフだからこそ、造形村ならではの哲学が盛り込まれたF-4Eは、パッケージングそのものがひとつの旅。みなさんも万全の装備を整えて出発してください。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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