プラモのパーツ、ぴったり合うのは当たり前?/タミヤのヨンパチファントム夜話

 そうでもないのがプラモなんですよね。キレイにパーツを切り離して所定の位置にピタッとくっつけても、なんだかズレたり、隙間が開いたり。それをズレないように貼るとか、隙間をキレイに埋めるのがプラモ作りにおける「技」とされていたりするわけですが、これが自分で組み上げる家具だったりしたら大問題。で、タミヤのファントムはどうなのかというと……合わないところがないんですよね。当たり前のようで、当たり前じゃない。プラモデルの世界において、全パーツが設計の意図通りにビチっと収まるというのはかなり驚くべきことなのですわよ。

 たとえば胴体と主翼。ほとんどの飛行機模型において、ここをビチっと合わせるのは難しいのです。ことF-4という飛行機においては隙間が開いてしまったり、主翼の上側の膨らみが不足気味になって「なんだか薄いな……」となったりする。胴体の幅が適切になるように中に突っ張り棒を入れたり、隙間に薄いプラ板を詰め込んで修正……なんてのが「ファントムのプラモあるある」なんですが、タミヤの新作は本当になんにも考えなくてもここがビターっと合います。

▲主翼上面のカーブと胴体のリベットラインのカーブがピターンと合ってる。これはすごいことです。

 おそらくタミヤの設計マンも、これまでゴマンと語られてきた「ファントムのプラモ製作記」を読み尽くしているはずです。もちろん、同社のベテランキットである1/32のファントムで定番とされてきた改修ポイントについても(定番の改修ポイントというのは、メーカーからすればずっと言われ続けるウィークポイントみたいなもんですから、リベンジできるならしたいと思うのは当然でしょう)。

 上の写真を見れば分かる通り、プラスチックの特性上どうしても内側方向に歪みがちな胴体左右のパーツは脚収納庫の後ろにどーんと伸びる桁のパーツやエンジンをホールドしているT字のパーツによってビシッとその幅と位置を保持できるように工夫してあります。こうしておけば、主翼内側の位置と胴体外側の位置を合わせることができるというアイディアですね。

 主翼の上下幅も、脚収納庫とエンジン補機類と桁を同時にこなす一人三役のこのパーツがバシッと決めてくれます。ひとつひとつのパーツの精度はもちろん、それらがどっちの方向にどんな力をかけられるのかを把握した上で、お互いの位置関係を協力し合いながら矯正していくように設計していくというのは並大抵のことではありません。

 とんでもない知見の蓄積があって、それをときに豪快なパーツ構成で、繊細に組み合わさるよう設計して製造することができるというのは、タミヤならではの横綱相撲。「後の先」なんて言いますが、本当にこれまでのファントム模型が抱えてきた難しいポイントをしっかりとリサーチした上で、徹底的に解消しようという意思が凄いんですわ。

 なかでもいちばん驚くのはインテークです。ファントムのインテークって、「機首の左右にある」「胴体からちょっと離れている」「縦長の長方形から丸く変化しながら胴体内部に潜り込んでいく」というめちゃくちゃにめんどくさいカタチをしているので、これを再現しながらうまくパーツ分割をして、機体のアウトラインをスムーズに繋ぐというのが信じられないほど難しい。だいたいは段差や隙間の巣窟になり、ユーザーが修正を余儀なくされるところでもありました。しかし……

▲スルッと入れて
▲ピタッとキマる。

 これ、接着剤まだ流してないんですよ。インテークのパーツを胴体に差し込んで、左右をキュッと指でつまんでいるだけ。もちろん、ここに少量の流し込み接着剤をスッと置くだけで、「どこが合わせ目だったのか忘れました!」っていうくらい面がキレイにつながってくれます。ファントムを組んだことがある人なら、絶対に滂沱の涙を流すポイントですねここは。

 合ってほしいところが確実に合う。プラモなんだからあたりまえでしょ?と思うかもしれませんが、このキットについていえば、それが別次元で実現しちゃっているというのが大きなセールスポイントのひとつになっていると思います。これも組んだ人にしか体感できない快感ですから、まあとりあえず貼ってみましょう。そしてこのファントム褒め話、もうちょっとだけ続くんじゃ……。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。