起床すると、空が燃えていた。あまりにも美しい。ベランダに出た僕の周りには風の音しかなく、ただゆっくりと燃えるような空がその勢いを少しずつ弱まらせていくのみだった。
「この空で僕の模型を撮影したい」。眠い目を擦り、部屋から三脚とコンデジ、先日完成した「タミヤ スピットファイア Mk.Vb」を持ってベランダへと向かう。
燃えるような空の下、静かな風の音だけが流れるその空間で、僕とスピットとの対話が始まる。光線が模型に当たるたびに、自分のイメージとの擦り合わせが脳内で何回も行われる。この脳内反芻が、プラモ撮影の最高の時間でもある。
自分のイメージが固まらない間に、空は普段の姿になっていく。まぁ、それもしょうがない。同じようなアングルでも空の表情、光線の量で模型はまた違った表情を見せてくれるから、空と僕のほんの10分程度の中でのやり取りの中に、思いがけない1枚があったりするもんだ。そんな1枚と出会えた瞬間も、また楽しいのだ。
プラモデルと時間を共有できるのは、何も作っている時だけじゃない。生活の一部となっている趣味は、いつだって自分のそばにいてくれる。美しい景色に心を動かされて撮影するということ以外にも、模型が好きだと気がつかないうちに、いつも見ている景色のどこかに模型的なものを感じていたりするもんだ(街で見る車、建物、商品のパッケージデザインなどなど)。プラモを楽しんでいるからこそ、いつの間にか育まれている価値観や行動力ってもんは侮れない。そしてそれは、絶対に僕達の趣味をもっともっと素敵なものにしてくれると思う。
1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)