

ハコを開けた瞬間に「これは作ってみたい!」と強烈な感情に駆り立てられました。アオシマの潜水母艦、大鯨です。上の写真のとおり、でっかい大砲は付いていませんし、巨大な艦橋もありません。なんだか背の高い、のっぺりした船です。そこかしこに付いているクレーンや唐突に生えている煙突など、「キミはいったい何者なんだね……」と訪ねたくなるような佇まい。

組みたくなる理由その1が、まずこの箱絵。勇壮な戦闘シーンではなく、潜水艦が3隻横付けされたサビサビの大鯨が静かな(しかし陽光を浴びてキラキラと光る)界面の上に浮かんでいます。まさにクジラのお母さん。小さくて狭くて潜りながら作戦を遂行する潜水艦に補給や修繕といったケアをするのが潜水母艦の役割です。

組みたくなる理由その2が、この色分けされたパーツたち。どうせ塗るもんね……という人もいらっしゃいましょうが、組むだけでなんとなく3色になるプラモデルというのは見た目に盛り上がります。鮮やかなベージュの木甲板と茶色いリノリウムがフネの雰囲気を僕らに教えてくれます。できればグレーがもうワントーン暗ければどっしりとした仕上がりになってもっと嬉しいな!

組みたくなる理由その3が、このやたらと背が高い船体左右のパーツ。5階建ての巨大な壁が激しく特徴的ですが、これは潜水母艦として建造されたあとに空母に改装することを見越して設計されたから。軍縮のために取り交わされた国際条約で空母の建造数を制限されているなかで「いざとなったら(=条約もクソもない戦争状態になったら)空母に改装して使っちゃうもんね」という意志がこの背の高い船体に表れています。上部甲板のど真ん中にちょこんとある煙突も「この煙突が邪魔なんで空母に使えない構造なんスよ」というのを表明するためのダミーなんだとか……。

組み始めるとやたらめったらと深いバスタブのような船体が出現します。各所の合わせはかっちりしていて、双眼鏡などのパーツが猛烈に小さいという点を除けば比較的すんなり組めるタイプの艦船模型です。ここにドーンと平らな飛行甲板を取り付ければ龍鳳という空母になる……と言われると、確かに空母らしい格好のフネです。

アオシマがこのところ精力的に再発している艦船模型のご多分に漏れず、最新設計で立体化された各種艤装パーツが豊富に付属。機銃や艦載機、探照灯や艦載艇、さらには菊の御紋もシャープに生まれ変わったことで大きな船体がキリリと引き締まります。ちょっと前のプラモデルがさらに見栄えのする完成品に生まれ変わるナイスな施策であります。

組み上がると全長およそ30cmの巨躯が机上に出現します。煙突の先端を黒く塗った以外はプラスチックパーツのままですが、大鯨というフネのキャラクターはじゅうぶんに表現されています。戦艦、巡洋艦、駆逐艦といった戦うフネだけでなく、ロジスティクスやサプライに奔走する艦船に目を向けることで「海軍」というシステムの全体像が少しだけ見えてきます。彼女だけでは淋しいから、次も楽しいフネを組んで並べましょう。そんじゃ、また。