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ガメラ塗ろうぜ!/説明書に塗装の楽しさがたくさん書いてあるプラモデル。

 そもそもガメラがバラバラになっていることがおもしろいんだよな……。プラモデルは何かがバラバラになっているのを組み上げる遊びなんですけども、ガメラですよ。ホンモノのガメラ(ホンモノとは?)はネジで外して腕が取れます……とかじゃないので、なんというかこう、ここで分割するといい感じですよね、というのが練り込まれていれば練り込まれているほど良い。そしてこのプラモデルは練り込みレベルが10000くらいに到達している感じがします。説明書も何をさせられているんだかわからんけどワクワクするよねって感じの図が良い。これが2023年の最新プラモなんだからなおさら良い。

 パーツはニッパーで切って、ちゃんと接合するかどうか仮に合わせてみて確かめて、オッケーそうなら接着剤で貼る。なんかガコガコするときはプラモが悪いんじゃなくてだいたい切った跡がちょっと汚かったりするから、ナイフとかヤスリで削ってキレイにする。そういう当たり前のことがおおらかな分割であればあるほど楽しいってのはありますね。パーツが大きいとひとつの工程でも進捗がデカい。歩幅がデカいと進むスピードも速い。

 どっこい、顔なんかシワとか牙とか舌とかで律儀に分割していて、小さい体積の中で寄木細工みたいに組むようになっているんですよ。そこに超小さい耳のパーツとかがあって、ギレルモ・デル・トロもこのプラモ組んでたけど耳のパーツ失くしたりしててさ。どでかい腕とか脚のパーツとは裏腹に、ちゃんと集中してピンセットでそーっと掴まないとどっかに飛んでいってしまうというスリリングな箇所もある。映画もプラモも、緩急があるといい時間を過ごせるっちゅうもんですわ。

 で、普段の私なら「組むだけでいいのよ」と書くんだけどさ。このプラモデルは色の指定だけじゃなくて色を塗るときの心構えというか、どんなことを考えながら塗ると迫力が出るかを書いてあるのがすっげえいいなと思ったんですよね。ただベターっとダークブルーやダークグリーンを塗ってしまったらそういうカタマリにしか見えないけど、たとえば生物っぽく見せるにはどうすればいいかとか、せっかく入っている彫刻を強調して見せるにはどうすればいいかとか。

 キットの構成も「組んじゃったからもう筆が入らないじゃん。ってことは塗れないじゃん」とならないように、ちゃんとこの状態で完成を寸止めできるようになっているのが良い。それぞれのパートを気が済むまで塗って、仮に組んで、全体のバランスを見て、またバラしてチューニングして……というのが固定モデルでもできるということですよ。パーツは多くないけど情報量はめっちゃ多いから、塗りの醍醐味が味わえまくる。単色モデルのいいところだよね。

 説明書をもう一回ホメる。まず「こいつはデカい怪獣なので明るい色で塗ったほうがいいぞ」と書いてあるのがいい。当たり前だと思う人もいるかもしれないけど、知らなかたら言われるまで「なんで暗い色だとデカく見えないんだろう」って悩むよね。

 それから、風合いを出すための塗装にはオイルパステル(身近なところではサクラクレパスがあるね)を使おうとか、フィクサチーフを使えばプラスチックの地の色を活かせるぞとか、オイルパステルはペトロールやエナメルシンナーで伸ばせるとか、プラモだけやってたら出会わないような技法にも触れているのがいい。さすが「プロのヒント」だ。


 ちゅーこって、説明書をじっくり読んだりパーツの曲面にうっとりしたりしながらガメラのカタチが完成。塗りたいからまだバラせるように四肢と甲羅は胴体に接着していないけど、それでもじゅうぶんカッコいい。リアリティのある塗装もいいし、パッケージイラストのように炎のオレンジの光が照り返しているのを塗装で表現するのもいい。なんならあなたの自由な発想で素敵なガメラを塗り上げてもOK。どんなルートも意のままだから、プラモデルはおもしろい。動かなくても単色でも、「だからこそ」の余地がここにはあるんです。そんじゃまた。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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