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豚のプラモデルと同じスケールの飛行艇がなくても、人間はお互いをうまくブレンドして眺められるって話。

 おおよそ1/20スケールでプラモデルになった『アジトのポルコ』です。これがいかにいいキットかは何度でも言っていきたいのですが、たまに聞こえてくるのが「同じスケールの赤い飛行艇(サボイアS.21)がない」という愚痴というか、不満というか、あるいはないものねだりというか……。
 あのですね、1/20スケールの飛行機はめちゃくちゃデカい。人間(豚だが……)と並べても存在感がありすぎて情景を食ってしまう。スケールを合わせないと気に入らないという人の気持ちも分からないではないが、模型なんだからスケール違いを組み合わせて「ちょうどいい景色」を楽しもうぜという話をします。

 これはファインモールドの1/72サボイアS.21に入っているパーツ。左のポルコ・ロッソと右のフィオ・ピッコロを見て「大きさの違う生物だ!」と思う人はあんまりいないと思います。模型だから、違う縮尺で立体化されているんだな。で、これがひとつのキットに入っているフィギュアなんだよね。ポルコは1/72、フィオはだいたい1/40くらいかな。違うスケールでも、同居していていいんです。ひとつの情景に。

 ほら、かつてはマスターグレード(1/100スケール)にも入ってたじゃないですか1/20のヒイロ・ユイとかノリス・パッカードとかキラ・ヤマトとか……。人間が1/100になってるともう小さすぎて誰だかわかんないし、逆に1/20のガンプラ(身長1mくらいになる)が家にいくつもあったら大変でしょ。人は人として分かる大きさ、メカはメカとしてちょうどいい大きさってもんがある。それがひとつの景色の中で組み合わさっていても大丈夫なんですよ。

 例えば1/35の戦車に1/12の人間が直接乗っかっていたら違和感ありますけど、メカと人間が触っていなければ大丈夫。遠近法。雰囲気。そういう景色。写真撮ればなおさら。特撮ってそもそもそういう手法じゃないスカ。近くのものを大きく、遠くのものを小さく作っておけばいいっていう。そもそも「アジトのポルコ」自体、机から椅子から遠近法で歪めまくった造形ですからね。「見立て」ですよ。

 ということで1/72のサボイアを組むわけです。別に気合い入れて作らなくても大丈夫。なぜなら「アジトのポルコ」の後ろにいる大道具だから。飛行機を完璧に作ってパイロットを乗せるなら別ですが、主役はポルコ。主役はデカイ方がいい。スケールを気にせずやっていきましょう。あなたが気にすべきなのはちょうどいい大きさ、お互いのバランス。最後にとった写真の雰囲気。OK?

 手近にあった適当なシートを敷いて、後ろにお気に入りの木片を置いて、両者を並べます。これを見て「小さい飛行機ですね〜」なんて野暮なことを言う人はいないでしょう。むしろ「なるほど、紅の豚ってこういう世界観だよね」というのはお互いの縮尺が違っていても伝わる。「このシーンのサボイアは後期型じゃないだろ!」というクレームはまあ……ハイ。

 いやね、もちろん大きなサボイアを作って後ろに置いて、広大なジオラマを作るのも止めはしません。しませんが、それとこれとは違う視点の遊びなんです。ディズニーシーの火山とシンデレラ城だってほとんど同じ高さなんですから、「見せたい世界観」が決まっているなら、縮尺を飛び越えた組み合わせも楽しんでください。おもろいっすよ。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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