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半世紀前の新車を半世紀前の新キットで味わう/イタレリのVWゴルフ

 VWゴルフ、いい車なのでプラモデルがいろんなメーカーからたくさん発売されています。今回手に入れたのはイタレリブランドで再発された1/24モデル。ベルリン警察のパトカー仕様です。日本でパトカーといえば白黒のイメージですが、ドイツでは最近まで白や銀に緑のアクセントがそのシンボルだったみたい。

>ホビコレ イタレリ 1/24 フォルクスワーゲン ゴルフ パトカー仕様

 エンジンや足回りはムニュムニュした彫刻ですが実直にパーツ化されていて、やりたいことに技術が追いついていない感じがします。それもそのはず、調べたらこのプラモは1970年代のエッシー製。エッシーはイタリアにあったプラモメーカーで、アイテムによってはかなりシャキっとしたものもあるんですが、こんなふうにちょっとノスタルジックな出来栄えのプラモも見られます。

 組んでみるとこれがまあ大変。パーツの取付位置はあやふやだし、水平垂直に貼るのがとても困難。何度もパーツを合わせたり外したりしながら「ここが正しい位置なんだろうな」というのを割り出す必要があります。しかし「ゴルフという革新的な大衆車が登場したことを、プラモデルで余すことなく伝えたい」という設計者のコダワリみたいなものがほとばしっていて、サスペンションの構造やホイールの構成なんかは「やりたいことはわかるけど、それを実際に組むのはユーザーなんですけど!?」と語りかけたくなる頑張りよう。

 ボディパーツもエッジの立ったジウジアーロ・デザインをよく捉えていますが、サイドウインドウの窓枠の彫刻は上部に行くほどあやふやになっていて、「どうやって塗ったもんかな……」と思案しちゃいます。でもいいんです。ガチでゴルフを作りたければ世界中の色んなメーカーからもっともっとシャープで精密でイマっぽくて組みやすいプラモデルが発売されているんですから、そっちを買ってくればいい。

 こういうときは、キットのあるがまま組んで、キットに導かれるように塗ることにします。ポワッとしたプラモは、ポワッと塗る。パーツの解像度と塗装の解像度を合わせておけば、精神の健康が保たれます。全力出したきゃ全力のプラモを買ってきた方がいい。間違いなく。

 なんとなぁく、塗りました。ちゃんとゴルフに見えます。このキットを読者のあなたにオススメするか……と言うと、そうでもありません。だけど、プラモと付き合っていると突然古くてアヤフヤなキットが手に入ってしまうこともあります。SNSにはキレイに仕上げた作例が上がっているかもしれませんが、それは誰かの作ったプラモであって、あなたのではない。だから、「パーツの合いや彫刻にキレがない時代のプラモだから、シャープにビシッと作れなさそうだなぁ」というのも、あなたのせいじゃありません。そんなときは、プラモと二人三脚のつもりになって、相手のペースに合わせてゆったり作りましょう。

 このプラモの美点を最後にひとつだけ上げておきましょう。1970年代のクルマも、1970年代の人たちにとってはビンビンの新車です。そのときに彼らがゴルフのどこを見ていたか、そしてプラモデルの設計製造テクニックの限界がどのへんにあったか、というのは新しいキットでは絶対に再現できないところです。まだまだプラモデルのツールやマテリアルが充実していなかった頃、当時のキッズやカーマニアがどんなふうにプラモを作っていたのかを、擬似的にタイムスリップして追体験できるというのは、プラモデルならではの機能なのです。

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からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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