

パワーをすべてのタイヤに伝える4WDってのはそもそもオフロード車で、でっかいタイヤでノシノシと荒野を進むものだった……。そこに「ちがーう!」と手を挙げたのが1980年のジュネーブショーに登場したアウディ・クワトロである。タミヤが四半世紀ぶりに再販した1/24のプラモデルは、たった数時間の作業といくつかの筆塗りでこの革新的でカッチョいいクルマを作り上げれられてしまう。シルバーのプラスチックのまま組んでも、「スマートで速い4WD車」がどれだけ偉大なものだったのかが、なんとなくわかる。
キットの構成は驚くほどシンプルで、パーツ数は現代の基準で見れば少なめ。黒いランナーは2枚に集約されており、ラリー仕様との互換を前提とした設計がうかがえる。ボディとシャシー、それにクリアーパーツとメッキパーツを除けば、本当にこれだけでいいのかと疑うほどだが、実際に手を動かせば「これで充分なんすよね〜」と納得いく。モチーフ(1980年)とプラモデル(1983年)の生まれ年が近いと、「なるほどこの頃ってこういう空気感でモノが作られていたのね〜」というのがわかってとてもよろしい。新しいキットだとモチーフとプラモデルの歳が離れるがゆえに失われるものもあるとオレは思うね。

タミヤらしさが凝縮されたエンジン再現。縦置き5気筒ターボエンジンを1パーツで再現しながら、パイピングの流れや補機類の位置関係がよくわかる立体構成となっている。パーツ数を抑えつつ、構造を把握できる造形を実現しているというだけで、このキットの真骨頂が見える。パーツ数を増やさず、完成後の満足度を最大化するというタミヤの設計哲学がまざまざと体感できる一幕だ。

シャシー裏側の構造も、簡素な彫刻ながら情報の取捨選択がはっきりしている。前後ともに全く同じパーツを組み込むくだりは「なるほどドイツ車的合理性!」という感じだし、実車のメカニズムに近づく入口として、必要十分な表現がなされている。現代の複雑なパーツ分割とは対照的に、簡潔に構造を読み取れる作りは、むしろ理解を促進する。

インテリアに目を移すと、ストライプ柄のファブリックを再現するためのデカールが用意されており、これがめっちゃ楽しい。茶色い地の部分を筆で塗り、そこにマークを貼ってソフターを染み込ませる。ひと晩寝かせてからつや消しスプレーを吹くと、あっという間に80年代のキャビンができあがり。キットの発売当時には実装されていなかった仕様だが、昨今のネオヒストリック系キット同様、再販にあたってアップデートされた部分として歓迎できる。

再販キットというと、難しさや手間を想像するかもしれないが、これは気軽に組んでこそ味わえる名キットだ。塗り分けのしやすいモールド、接着や仮組みにストレスのない設計、そして現代でも十分に通用する立体感。40年前の設計とは思えない完成度の高さに驚かされる。実車の意義を踏まえたうえで、模型としての“学びやすさ”を備えた本作は復刻という枠を超え、いまなお実用的かつ魅力的なキットとして超オススメなのである。