今回ご紹介するツールは「ゴッドハンドのエッジ出しヤスリ」です。ゴッドハンドはニッパーを皮切りに、より踏み込んだプラモづくり用のツールを発売しています。そもそも何で模型業界のツールにこんなにもさまざまなヤスリが売られているのか……。それはプラモの特性にあり、さらにはプラモをもっと研ぎ澄ませたいと言うモデラーの欲望によるところが多いです。そもそもですが、何でプラモのパーツを削るのでしょうか……やりたくなければやらなくていいんですよ。でもやりたくなる理由もあるのです。
「プラスチックの平面は平面ではない!」。プラスチックの暗黒面のパワーを良く知る俺たちモデラーが、よく若いモデラーに言いがちな言葉です。「わたしに加われ。わたしがお前の訓練を完了させてやる!!」
まずはプラの平面ってどうなってるのよ? というのを分かりやすいように、下地塗料であるサーフェイサーを吹きます。固めのヤスリでこすってみると……。
「ウソだ。ありえない!」。面がたいらなら、サーフェイサーが均等に削れるはずだ!!
そう、意外と広い面はうっす~らと、落ちくぼんでいることが多いんですね。で、これがプラモデルの面白いところでもあります。必ずしも設計のデータが完璧に反映されるわけではない、金型に樹脂を流し込み、固まる段階でさまざまな揺らぎがあるわけです。特に強度確保のリブや、接合のピンが裏にあるとそこはへこんでいることが多かったりします。この凹みを「ヒケ」と呼んだりします。
そういうパーツをシャキッと削り込んで、ゆらいだ面を平らにし、丸みを帯びたエッジをはっきりとさせることで、よりシャープに見せようとする。そういう作業を、多くのモデラーがやっている「整面」と呼びます。地味な作業で、85点の状態を90点にするようなほんのちょっとの差のものも多いのですが、その差を積むのもまたプラモデルというものでしょう。暗黒面のパワーは素晴らしいぞ、とささやくわけです。
そんな整面にとっても力を発揮してくるのが、ゴッドハンドのエッジ出しヤスリ。ただの板のように見えますが、これがまたすごいのです。
そこそこ重量感のある金属の板に、びっしりとヤスリ刃が並んでいます。端までびっちりで、とっても目が細かいですね。
ヤスリは片面だけで裏はツルツル。とても強直。金属は反らないので、パーツの角や、ヒケた揺らぎの端に、しっかりと刃が当たる当たる。
この金属ヤスリのすごい所は、実はどの方向でも削れること。そのため、持ち方も自由!! これは三本指で手首のスナップを使ってしょりしょり。そして隠れたもうひとつの特徴として、ヤスリとしては「パーツの白化が驚くほど少ない」というのもあります。
当たり方が強く、削れかたは紙ヤスリのような繊細なタッチなので、製品名どおり角がビシッとシャープになるエッジ出しもできます。金属ヤスリはだいたい押す時に削るものですが、これは力をほどほどに、紙やすりのように前後どちらにも動かして削ったほうが、うまくエッジを立てられました。紙やすりと使い心地が変わらずに作業できる金属ヤスリ、と言った感じで独特の切削性があります。
左がヤスリをかけてサーフェイサーを吹いた状態。右がキットのまま。このパーツだけでみればちょっとした差ですが、これが全てのパーツで集積すると最後にパワーを発揮します。だからこだわりたい人は全パーツを綺麗にやすりがけするんですね。地味で時間のかかる作業ですが、こう言ったものが楽しく思えるのもまたプラモ。そんなこだわりアニキがこぞって挑む、整面をバッチリサポートするのがこの「エッジ出しヤスリ」なのです。