

この週末に再販されたタミヤのポルシェ962C。窓やヘッドライトのクリアーパーツがボディと一体で成型されています。どうしてか。このキットのボディが1980年代に登場した1/24スケールのRCシリーズ「タムテックギア」のために作られた金型を流用しているからです。
タミヤのプラモデルに親しんでいると、こうした“逆輸入”的な現象にしばしば遭遇します。タミヤの歴史においてRCとプラモデルは密接に関係した存在であり、金型や設計思想を行き来させながら商品ラインナップが組み立てられてきました。プラモデルだけを見ていると見過ごしてしまう濃密な歴史が、RCの世界を眺めるとくっきりと浮かび上がってきます。
その“もうひとつの年表”をまとめたのが、ワン・パブリッシングによる『タミヤRC50年間の全記録』であり、これが本当におもしろい。買いましょう。1976年に登場したタミヤ初の電動RCカー「ポルシェ934 Turbo RSR」から、2020年代の最新RCバギーまで、じつに1200以上のアイテムが収録されています。戦車、バギー、スポーツカー、F1マシン、トラック、グライダー、ヨットに至るまで、多様なスケールとカテゴリーが一望できます。ただカタログ的に羅列されているのではなく、それぞれのモデルに込められた技術的な工夫や市場背景、時代ごとの空気感まで織り込まれているのがこの本の素晴らしいところ。ただ漠然と眺めて「こんなんもあったな〜」と目を細めるだけでなく、じっくりとひとつひとつのモデルを読み込むことをおすすめします。

いまやホビーの世界に揺るぎない地位を獲得したミニ四駆も、タミヤRCの歴史を抜きに語ることはできません。1986年から展開されたレーサーミニ四駆シリーズは、RCの人気モデルをスケールダウンしたアイテムを続々と市場に送り出すことでユーザー層を拡大しました。ホーネットやホットショット、アバンテといったRC車両がミニ四駆化された一方で、ミニ四駆の成功がRCモデル展開の後押しをしたこともあります。また、ボディやシャーシの共通規格や改造パーツの展開といった部分では、明確に思想的/技術的な共有を見出すことができます。

RCとプラモデルのダイナミズムを象徴する存在が、1977年に登場した電動RCカー第3弾「タイレルP34」です。前輪4輪・後輪2輪の6輪構成という異形のF1マシンを当時の技術でRC化するというのは、常識外れの挑戦だったはずです。しかしタミヤは、それをプラモデルとRCの両面で(しかも複数スケールで!)一挙に製品化しました。これは技術的な偉業というだけでなく、いまも現役で「面白いものをちゃんと走らせる」ことに意味を見出してきた同社の滝文人氏(通称・滝博士)の持つ尖りまくったビジョンの具現化でもあります。

この本を読むうえで、ぜひ一緒に手元に置いておきたいのが『田宮模型全仕事』(第1〜3巻)。あちらがプラモデルの全製品を網羅した歴史書だとすれば、『RC50年』はその歴史を反対側から眺められる資料集として意味を持ち始めます。歴史を学ぶときにひとつの事件を複数の立場から読み解くことで理解が深まるのと同じように、タミヤのプラモデルとRCの関係を相互補完的に捉えることは、断片的な知識を接続し、タミヤというブランドの地図を立体的に浮かび上がらせる楽しさに直結します。

プラモデルを作るという体験は、ただパーツを組み立てるだけで終わりではありません。その背後にある思想や技術、開発の“必然”を知ることで、模型はもっと面白くなります。『タミヤRC50年間の全記録』は、その読み解きを可能にする至高のテキストであり、RCを知らないプラモデルファンにこそ手に取ってほしい一冊です。いま自分が組んでいるキットが、いかなる時代背景のうえに成り立ち、どれだけの試行錯誤や技術の積み重ねの上に存在しているのかが見えてくるだけで、プラモデルがもっともっと面白くなるはずです。みなさんも、ぜひ。