私がイデオンの立体物に求めていたものは、宇宙を一掃する凄まじい力強さではなく、このプラモデルの様なキラキラしたブロックトイっぽさだったのかもしれない……!と、思わせるほどに良くできたキットでした。アオシマのイデオン。青島文化教材社こそが第六文明だったのでは!?なんて、妄言が飛び出てしまうほどの説得力がある。それはなぜか。
股関節は、足のつけ根の四角いブロックが360度回転するという大胆な設計。とても好感の持てる割り切り方です。ロボプラモにありがちなパカパカ開くスカート状のパーツが無いので、動かしていて超気持ちいい。
イデオンのアニメーションにおける気持ちよさのひとつは「怒りの解放」であり、その昂りはどう表現されるかと言ったらミサイルをバンバン打つとか、惑星をまっぷたつにするとかいろいろあるんですが、私が一番滾るのが巨大な手刀・足刀を使った豪快な格闘戦です。本キットの「よく動く足」そして「力強い彫刻の手」は、そんなアニメに負けないぐらいエネルギーほとばしっています。
工業ロボット感の一切無い、シンプルな仏像を思わせる手の造形。劇中の印象と同様に「絶大な力を秘めた、トイの様なロボット」という矛盾を孕んだ神秘性を感じさせます。
そのバイザーをした顔からは感情の読めないロボット。だからこそ、一番感情を表現できるのが握り拳や平手といった「手の開き方」でしょう。そしてこの平手を眺めていた時にふと、ある予感が芽生えました。これにもうひと手間だけ加えてやれば、ロボットを超越した躍動感がさらに吹き込まれるのではないかと。やります。
カットする角度を微妙に変えながら、指一本一本を違う動きにします。自分の指を手本にしながらやったのですが、これが思ったより難しい。なかなか慎重な作業が要求されます。手でいろんなポーズをつけてみるとわかるんですが、指って関節ごとに曲げられる角度が微妙に違うし、頑張れば手の甲側にも自力で20度ぐらいは曲がるんですね。人体って面白い。指の表情を変えただけで、イデオンがどんどんエネルギッシュになっていきます。ロボットを超えた存在へ──。
後ろのポスターは私の好きな『ダンシング・ザブングル』というレコードの特典。そこで描かれた激しく踊るアイアン・ギアーとペアダンスというワケです。
イデオンって両手両足が長くて末広がりなんで、ソウルトレインに出てくるようなベルボトムを履いたスタイル抜群の70年代ディスコダンサーっぽいと思ってたんですよね。コスモはアフロだし。エネルギーを爆発させて快感を得る方法として、イデオンが得意な「戦い」ではなく、「ダンス」という方法をとらせてみましたが、思ったより上手ですね。