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プラモとしてはほぼ満点のアオシマ製イデオンが、オレたちに想像力の限界を突きつける!

 悩んでいた。イデオン……イデオンって難しくない?全高18mのモビルスーツの”リアル”ならオレも『ガンダム・センチネル』にやられてこっち、ずっと考えてきたさ。お台場に立ったRX-78やユニコーンガンダムを見て「大きさはわかるけど、これが動くってどういうことだろう」とか悶々としたよ。だけど、伝説巨神ってなんだ。第六文明の遺跡ってなんだ。全高105mって言ったらもうそのへんのタワマンくらいあるぞ。

 ただ組むだけならまだしも、手触りのあるロボットのリアルじゃなくて、人知を超えたイデオンのイデオンらしさをどう表現するか。私は周囲のリアルタイムイデオンアニキたちに話を聞いて回った(酒を飲んだだけという説もある)。しかし、これと言った収穫はなかった。「これが模型表現としてのイデオンだ!」というシュートコースを見失ったまま、オレの部屋にはイデオンの大きなハコが鎮座し続けていた。

 いざ開けてみれば、やはりその見た目はデッカいロボットプラモである。ガンプラに慣れているとバンダイスピリッツ以外のロボットプラモ(しかもスナップフィット)を組むのはちょっと億劫だ。カチッとハマるか、ハマる渋みは適切か、エッジはダルくないか、色分けはどれくらいされているんだろうか。自動的に、ガンプラを基準にして評価しちゃうオレがいる。ああ、もうイデオンかどうかじゃなくて、プラモとしてどうなのかが気になってしまっている……。

 全部の袋を開封してランナーを引きずり出して、驚く。色分けすごすぎませんか?っていうか、シールが入ってないんすね。聞けば、「パーツで全部色分け出来てます」とのこと。ええっ、じゃああとはもう組むだけじゃないですか。全高105mらしさとはなにか、とか、後回しでいいや……。この色の洪水を早く楽しみたいんじゃよ。

 バイザーはクリアーブルーのプラスチックで3枚付属。え、ツルツルのやつはわかるけど水平に走査線みたいなのが入ったイデオン特有のやつが2枚あるのはどうして?よーく見てみると、なんと走査線の彫刻がバイザーの内側に入ったものと外側に入ったものがそれぞれ用意されている!

 内側に線が彫られたものはパーツの厚みのせいでちょっと線が太って見える。その代わり塗装表現で「外ツルツル、中に線」が楽しめそう。反対に外側に彫られた線はシャープさがあるけど、ちょっと絵画的な処理になってもいいという人にオススメだ。こういうコダワリ、おもしろいなぁ。

 組み始めてみると、とっても普通のロボットプラモだ。内部フレームこそないものの、要所要所にポリパーツを仕込んで、大量のブロックを組み立ててそれぞれを接続していく設計。ハメ合わせの渋みもユルすぎず硬すぎず、想像の3倍くらいストレスフリーな組み立てが楽しめる。パーツの合わせ目も可動ギミックも、何もかもが牧歌的だった時代のイデオンのプラモデルを知っている人が組んだら、きっと驚くだろう。

 何よりすごいのは、パーツのシャープネスだ。襟の黄色と白と赤が入り乱れる部分など、ほとんどゼロゼロのエッジが角で集合して、ピキーンと色が分かれる。ガンプラでよく見るブロックの角の細い面取は腕や脚にみられるけど、胴体〜頭部にかけての造形は明らかに異質なロボットの模型だ。

 全身が組み上がって、また頭を抱える。カッコいいし、モノとしての充足感も満点。で、これを超巨大な異文明の遺跡に見せる方法って、いったいなんだろうか。(プロポーションの好みは人によって千差万別だろうが)100点に近い色分けと強烈なシャープネスを持ち合わせたプラモデル。ここに受け手のイマジネーションを注入して150点に仕上げるのはとっても難しそうだし、いまもシュートコースは見えていない。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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