
めっちゃデカい正方形の箱を開けたら突如極彩色のパーツたちとご対面。待て待て、親に向かって何だその色は。オレはおまえの親じゃなかった。まあいいや、ごめん。このプラモはもうこれで全部です……って言いたくなるくらいビビッドだよね。モンスターのおどろおどろしい色とか、全部同じ味も素っ気もない色でも良かっただろうに、このファンキーな3色を選んだメーカーのアニキ、こんど一杯おごるね。

「物質転送装置が完成したので自らの身体で実験しちゃお……。そしたら転送カプセルに蝿が1匹紛れ込んで人間と蝿が混じったモンスターが爆誕!これから私(と恋人)の暮らし、どうなっちゃうのーっ!?」という小説『ザ・フライ』(その後2度映画化されています)のプラモデルです。私の世代だと1986年公開、ジェフ・ゴールドブラム主演のクローネンバーグ版がめっちゃ怖かった記憶なんですが、このプラモはあくまで原作小説をイメージソースにした造形なんだとか(……というのはまあオトナのアレで、調べる限り1958年版の映画の造形に酷似しています)。
ってことはアレだろ?古くてヨボヨボのプラモデルの金型を掘り起こしてきて再販する系の商品だろ?大味なアメリカのフィギュアキットだろ?出来もモンスターだろ?と距離を置きたくなるじゃないですか。オレはもうそういうのにビビらないからな。どんなプラモが来ても熱く抱きしめる!

すんませんでした。完全新金型の超新製品でした。パーツ見ただけでめっちゃ良くできているのがわかりますもん。細いところ、複雑な曲面、クリーチャーらしいテクスチャ、全部入り。ただただ目に痛いプラスチックの色にまどわされていただけ。パーツ切って貼るでしょ?すんげえ合うよ。何しろ3Dのデジタルデータをベースに金型作ってますから、国産プラモに限りなく近い精度が出ています。
ちなみにモナークっていうメーカーはこうやって「古き良き(おもに米オーロラ社が得意としていた)モンスターのプラモデルのかほり」を現代の技術で作るカナダのニクいメーカー。これはいわゆる「放送当時出てもいなかったガンプラの”旧キット”を新しく作る」みたいな超頭のいい遊びなので、歴史や文脈が分かるやつだけ分かれコノヤロウという態度がよろしい。日本でいうとエクスプラスも同じような路線で戦っていますが、昔のプラモのパーツ数やパッケージの佇まいなのに造形がめっちゃ良くてパーツの合いも完璧っていいよなぁ。オレはこういうのすごくいいと思います。細かくてナウいのだけが偉いわけ、ないじゃん。

フルカラーの説明書が最高すぎるんですよ。あらゆるところにユーモアとリスペクトが散りばめられている。「小さいパーツは小さいノコギリで切るといいよ、なぜならニッパーで切ると飛んで(FLY)いきますからね。あなたがそれを這いつくばって探しているときもそのパーツは『助けてー!』と叫んでくれませんからね」と書いてある。ここ以外にも読んでてニヤニヤするお話がたくさん。そして蝿化した顔面の分割とかすごいっしょ。これがわりとビタビタ合うので本当に楽しいのだ。

できた〜!ド派手すぎる配色でおどろおどろしさはゼロ。助けてくれー!って叫んでいるはずのハエ男氏であるはずなのに『サタデー・ナイト・フィーバー』に見えてくるんだよな。もちろんこれは「3色のプラスチックで最大限のファンクネスを出すためのギミック」ですから、このままでもいいしもちろんおぬしの好きな色に塗っていい。しかしハエ男、哀れなことに左腕と顔が蝿に置き換わっちゃってますね……。

こちらは「こまけぇ〜!」と叫びながら組んだ、物質転送装置に張り付く蜘蛛と蝿。マクロレンズで撮影して拡大すると、あっ!さあ、博士はもとの人間に戻れるのでしょうか?それとも……。ということで、めちゃくちゃ楽しいザ・フライのプラモデル、ぜひとも組んでおぬしの好きに塗りましょう。このまま飾っても耐えられるインテリアをお持ちのアナタは、センスいいっすねぇ!そんじゃまた。