

「通常ならさまざまな場所が可動するロボットのプラモデルを、あえて完全固定ポーズのキットにしてしまう」という点がminimum factoryのロボットプラモの特徴。この特徴はちょっと変わった美点を産んだり、題材となった作品自体の魅力を再確認させてくれることがあります。今回ご紹介する「minimum factory グリフォン & キュマイラ エフェクトカラーVer./レイバーカラーVer.」は、まさにそんな面白さが味わえるキットです。
『機動警察パトレイバー』に登場するロボット、レイバー。そのデザイン上の大きな特徴が、関節部分が柔らかいカバーで覆われていることです。「戦争する機械じゃないから可動部を装甲化する必要もないし、だけど関節に砂やら埃やらが詰まったら大変だし、それならカバーで覆ったらいいじゃん」という理屈はなんだか現実的で、今までのロボットものとデザインの手触りが全然違う。パトレイバー特有の地に足ついてる感は、あの関節カバーからもかなり滲み出ていたと思います。

しかし、レイバープラモデルやオモチャにするとなると、この関節カバーは大きな壁となって立ち塞がりました。昔のパトレイバーのプラモデルは芯になる骨組みを作って、そこに軟質素材のカバーを被せる方式。確かにレイバーの構造としては正解なのですが、軟質素材が硬くてあんまり綺麗にポーズが決まらない(あるいは時間が経つと素材が劣化してしまう)という悲しみがありました。後発の製品もさまざまな解決策を模索していますが、残念ながら「ポーズに合わせてカバーのシワの方向や深さがグニグニ変わる」という表現はプラモデルの大きさでは再現が難しい。生々しい関節カバーの表現に関しては、ガレージキットなどで展開された固定ポーズのモデルに圧倒的なアドバンテージがあったのです。








前置きが長くなりましたが、minimum factory版のグリフォンとキュマイラも、固定ポーズでの立体化です。箱を開ければ、中に入っているのはそれぞれの機体のパーツがおさまったランナーが。以前紹介したガンバスター同様、どこが何の部品なのか何となくわかりますが、どう組み立てられるのかがパッと見では読み取れない分割になっています。



組み立てに関しても以前のガンバスター同様、早過ぎず遅過ぎないちょうど良い速乾性がある「Mr.セメントS」を使うのが便利です。「そこがくっつくの!?」と言いたくなるような部位が、スッと吸い付くように固定されるのはかなりの快感。一度味わうとやみつきになる面白さです。グリフォンの胴体に至っては「縦に4枚下ろしにされる」というトリッキーな分割になっており、通常のロボットプラモとは一味も二味も違うパーツ構成に唸らされます。




組み上がってみればこの躍動感。空中に飛びあがってキュマイラに襲い掛かるグリフォンと、下から迎え撃つキュマイラ。コミックスの一場面を彷彿とさせるようなポージングです。もちろん固定ポーズなので、関節カバーのシワもひねった腰や振りかぶった肩の形に沿ったものになっております。「どこも動かないレイバーのプラモ」のアドバンテージは、まさにこの点に濃縮されているのです。

パトレイバーといえば、職業ものとしての地に足のついたドラマと、警察や各種機関による生々しいロボット運用の描写が印象的な作品です。しかしそうした落ち着いた要素に対し、レイバー同士の肉弾戦によって事件にケリがつくことが多かったのも事実。レイバーが「リアルロボット」らしからぬド派手なポーズで固定されたこのキットは、「現実的なドラマが煮詰まった先に、ロボット同士の殴り合いがある」というストレンジさもこの作品の魅力だったことを思い出させてくれるのではないでしょうか。

成形色が賑やかなので、シリーズをたくさん作って並べても楽しいのはガンバスターのレビューでも書いた通り。赤いグリフォン、めちゃくちゃ新鮮ですね。もちろん、細かく関節カバーを塗り分けたりして劇中カラーを再現してもよし。色々な食べ方が楽しめる素材なのは間違いないでしょう。
ともすれば作品自体の強い持ち味に隠れがちな「派手で躍動的なロボットの殴り合いも見られる」というパトレイバーの魅力。ド派手なポーズで固まったグリフォンとキュマイラによって、おれはその魅力に改めて気付かされました。「ロボットが派手に殴り合ってると面白い」というのはかなり内海課長めいた感想ですが、作っているのはヤバいレイバーではなくプラモデルなので問題なし。みなさんも、「派手で躍動的である」というパトレイバーの面白さに、このキットで触れてみてください。