時に西暦2022年。人類は再び月への道を歩み始めた。アポロ計画が終了して以来の人類が月に行く計画、アルテミス計画が開始されたのだ。8月末に予定されていたアルテミス1号は打ち上げが延期された結果、皆既月食という天体ショーを挟んでみんなの注目が宇宙に集まったその翌週、日本時間11月16日の打ち上げを目指して現在調整中だ(原稿執筆次点)。気分はもう月面!と宇宙開発に想いを馳せる時代がまた来たのだ。
そんなわけで今回はプラモデルを通して過去のアポロ計画を…点振り返らないんだな!これが!
どうせ振り返るなら未来にしようぜ(?)。人類を初めて月面に送ったアポロ計画は17号で幕を閉じた。そう、現実ではね……でもキャンセルされた18号以降の計画を想像したことはない?きっと宇宙船も進化してどんどんカッコよくなって……ペガサスホビーの1/72アポロ27号はそんな妄想から生まれた架空の宇宙船のプラモデルだ。
ボディは白一色で成形されパーツも本当に少ない極めてシンプルな構成。胴体から四方に配したロケットエンジンを繋ぐトラスがデザイン上の見せ場といったところ。
しかもこのキット、開けてみるまで気が付かなかったのだけど、接着剤不要のスナップフィット!内容がシンプルだからバッチリ手を加えてやろう等と考えてしまうのだけど、シンプルだからこそ(スナップフィットならその気になれば後から分解できるし)まずは組み立てて最低限の未来を手につかむ所から始めたい。夢見るばかりでは何時までも月にたどり着けないのだから。
操縦席は透明なキャノピー越しにパイロットが背中合わせで二人乗る。現実の有人宇宙船が超優秀なエリートパイロットを擁しながらスポーツカーやジェット機のような「前を見て操縦する乗り物」ではなかったことに対する不満と、でも未来の後継機ならそんな姿になるんじゃないかという期待、それでも前だけ見て操縦できるほど宇宙は甘くないっていう程度のリアリティは持ち合わせているんだぜ…という葛藤(?)が滲みだすスタイリングなのかもしれない。
総23パーツのシンプルな組み立てに対して塗装図はとても丁寧に塗り分けを指示してくれる。箱画を見ても分かるのだけど、実在のアポロ宇宙船本体よりも打ち上げブースターであるサターンV型ロケットの意匠を色濃く取り込んだデザイン。星条旗とUSAのマーキングがまぶしい。
現時点でこんなデザインが地上から打ち上げられて月を目指すロケットとして現実的かどうかでいえば嘘八百でしかないのだけれど、なぜこのカタチを夢想したのか?なぜこの架空の存在に「アポロ27号」と名付けたのか?なぜ18号から26号を飛ばして27号としたのか?を考えてみて欲しい。
絵を描くAIにお願いしたわけじゃない。この地球(ほし)の誰かが描いて、名前を与えて、金型を彫ったんだ。嘘八百の、人類の、素敵な叡智がここにある。