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【書評】模型で語る『王立宇宙軍 オネアミスの翼』の美学/スケールアヴィエーション2025年11月号

 アニメーションのすばらしさを語る手段は、なにも言葉だけではない。模型という手法を最大限に駆使して、映画『王立宇宙軍 オネアミスの翼』のなにが素晴らしかったのか、どうエポックだったのかを模型で語ってくれるのが今回の特集だ。テクニックとアイデア、そして情熱を注ぎ込んだ作例の写真集は、「アニメーションの感動を表現し、手繰り寄せる最適解こそが模型だ」と思わせてくれる。そして驚くことにその営み自体が、結果として映画の構造と相似形になっている。ちょっとした奇跡のような一冊だ。

 全11作中9作例が映画に登場した機体の、誌面を挙げた超総力特集。その内訳は2017年に唯一プラモデル化されたPLUM製『1/72第3スチラドゥ』の作例が3機(三者三様で非常に興味深い)。フルスクラッチビルド(=ゼロから作り出した模型)が5機。レジンキットが1機という尖った編成だ。残り2機のうち1機は連載の「ウキトバチ」で、もう1機は「王立宇宙軍の機体っぽい」SO.8000ナルヴァルという機体のフルスクラッチビルド。これもまた圧巻の出来。
 オネアミスは模型化に恵まれた作品とはけっして言えないし、メカニックによっては劇中の描写が非常に少ない。だからこそ、描かれていない部分まで思案を巡らせ、架空の航空機にリアリティを持たせる為のハイレベルな考証術が展開されている。そしてそれを実現するテクニカルな工作と凄まじい工数によって、唯一無二の超能力模型バトル(人と模型との戦い)を観戦できる。

 3Dプリンターによるパーツ製作はもはや当たり前。他キットからの流用、ヒートプレス加工から旋盤加工まで、高度な手法が当たり前のようにさらりと解説されていく。それぞれの作例が必殺技のようだ。映画オネアミスの最大の魅力のひとつは、「ハイパーエキゾチシズム」とでも言うべき完全な異文化を演出するための、超膨大なプロップ設定にある。それによって誰も見たことのないリアルを創造しているのだが、それと同様に雑誌作例もまた力強い情報の足し算に次ぐ足し算で異世界の構築に成功している。
 そしてその緻密な作例ひとつひとつが、「群」となって純度の高い1冊の模型誌をかたちづくっている。その様子は、まるで映画のラストで打ち上げられたオネアミス王国第4号ロケット「立派になってね=お姉さんも見守ってるわよ」号そのものだ。この鬱屈した世界で、とにかくまだ誰もやらなかったことをやってやろう、それが多くの人々に望まれない無用の長物であろうと、戦争の道具であろうとも、燻っていた何かに火をつけて飛ばしてやろう、という映画の構造とダブって見えてくる。そう、スケールアヴィエーション自体がその激情と火力で『王立宇宙軍 オネアミスの翼』そのものと化し、宇宙へ打ちあがってしまったのだ。

 さらに山賀博之監督へのインタビューによる制作秘話や、PLUMへの第3スチラドゥの開発インタビューも充実した内容で読み応え十分。ひとつ惜しまれるのはネイキッドなプラモデル第3スチラドゥ自体のレビューが無い点だが、幸いメーカーから再販アナウンスがあったばかり。そこは我々自身がその目で造形を確かめる余白として楽しみたい。

 表紙は、彩度を抑えた写真表現と、磨き込まれた流線型の機体に移り込んだマジックアワーの景色が印象的。虚構か現実かその境界は曖昧だが、アニメーションと模型と現実の狭間に、美しさは確かに“ある“と語りかけくるようで、本誌の核心を体現している。また、映画では主人公シロツグのリビドーが所々で物語を回転させるわけだが、その要素は東雲うみの華麗なグラビアが担っている。スケールアヴィエーション2025年11月号、燻っている何かに、確実に火をつけてくれる、映画のような一冊だ。

ハイパーアジアのプロフィール

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

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