「これは作れないだろう」と苦笑いをしながらも、作れたらうれしいと思い、マシーネンクリーガーのルナガンスを買ってきた。なぜ作れないと思ったかというと、複雑な造形を見ていて自分の手に負えない気がしたから。
プラモの箱を開ける瞬間は、試験の問題用紙をパラっとめくるときと似たような感覚がある。見た瞬間に「終わった……わからねぇ」と思うかどうか、みたいな。ルナガンスも箱を開けたときはそっち側だった。なんせ、真ちゅう線、スプリングコイル、ビニールコードという、「プラモって『プラスチックモデル』のことですよね?」と言いたくなる異素材の主張が激しかったのだ。しかも、それらを指定の長さに切って、加工しなければならない。
造形の複雑さ以前に、いつもと明らかに違う素材たちの方に難しさを感じてしまったが、直径0.5mmの真ちゅう線を55mmに切るみたいなことが定規とニッパーを使うと普通にできた。
接着だって、瞬間接着剤を持っているから難なくできる。ビニールコードを通す作業はピンバイスでわずかに穴を拡張して通すのが難しかったけども、何とかなった。このような作業を一番最初の工程である、頭部の組み立てでやると、プラスチック、ビニールコード、真ちゅう線、コイルスプリング……と箱の中のすべての素材をひととおり触ることになる。この組み立て順が私はとても気に入った。
何せこうして振り返ってみると、ルナガンスを作るために必要な道具と使い方が最初のステップでわかるようになっているからだ。もし、定規がなかったら買いに行ったし、他の道具もそうしただろう。
箱を開けたときに「終わった……」と思ったルナガンスは最初の工程に取り組むことで、これから何をするのかを教えてくれた。直観的に不安に感じた部分は必要な道具があればどれも楽しく作業を行えたのも良かった。こうなってくると次の工程も楽しみだし、やたら長いスプリングコイルをどう使うのかなども気になって仕方がない。
1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。