何を売ってもいいんです/ハセガワ レトロな自販機のプラモ

 ちょっと古い自販機をいっぱいプラモ化しているハセガワから「ブックベンダー」と銘打たれたシリーズ最新作が発売されました。いまではとんと見かけなくなりましたが、言ってみれば書店で買いづらいタイプの本を夜中にこっそり買うために設置されていた自販機の模型化であり、「あったあった!」という人と「まったくご縁がありませんでした」という人に二分されるモチーフなんじゃないでしょうか。

 このプラモ、言ってみれば四角四面な板を箱組みするだけで、全面のボタンやカバーが透明なのとお釣りや商品の取り出し口が少々別パーツ化されているだけのごくごくシンプルな構成。それを「本の自販機ですよ」という見た目にするためにひたすらチカラが入っているのが箱やシールと言った印刷物の数々です。そもそも組立説明書が箱の裏面に印刷されているし、箱のベロの部分に売り物である「架空の本」のカヴァーが印刷されていて、自分で切って陳列するという工程が求められます。変でしょ。

▲お金を入れるメカ部の緻密なディテールが繊細でよろしい

  私がいちばん感動したのは自販機そのものよりも(だって箱なんだもん)、「開いた本のパーツ」が入っていたこと。1/12スケールの本がプラパーツになっているの、面白すぎませんか。これだけでは当然ただの緑色の「形状」でしかなく、そこにはなにも印刷されていません。これまた同梱されたシールから自分で選んで「何の本か」を確定させることがユーザーには求められます。

 やたらと充実したシール類と一緒に、「白ポスト」のペーパークラフトも入っています。皆まで言わないけど、これがどういうものを売っていた自動販売機なのかはわかるでしょ?って内容。ちなみにセクシーなお姉さんはハセガワが精力的に展開しているレジン製の「12リアルフィギュア コレクション」各製品の写真なんですよね。自社のアイテムをこういうところに持ってくる姿勢、まさに新世紀のハセガワです。

 いざ印刷物を使わずに組んでみると、案外ポップなカラーでシンプルな自動販売機が出現します。12の商品が陳列できるわけですが、ここに必ずしも「特定のジャンルの本」を並べなければいけないという決まりはありません。コンビニに行けば縮小カラーコピーも簡単ですから、例えば自分のお気に入りの本やプラモをケースの中に並べてもいいし、同人誌即売会でお品書きがわりの自著のミニチュアを並べたっていいいんだよな。あと黒く塗って『モヤモヤさまぁ~ず』でおなじみの1000円ガチャを作ってもいいじゃんとか、いろんなことを思いつきます。

 名前や印刷物が強烈なのと、「こんなものがプラモに!」という驚きや呆れがバリューになっている商品ですが、ちゃんとモノが陳列できるタイプの自販機のプラモってなかなかありません。オーナーはあなた。この自販機で何を売るかを決めるのも、あなたなのです。

<a href="/author/kalapattar/">からぱた</a>/nippper.com 編集長
からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。